頭痛は、日ごろ最もよくみられる症状のひとつです。脳の病気や外傷によって起こる頭痛の中には、命にかかわるものもありますが、たいていの頭痛は思いあたる原因がないのに起こることが多く、それだけに治療がおろそかになりがちです。
中医学では、頭痛を急性のものと、慢性・反復性のものに大きく分けて考えます。急性の頭痛の原因となるのは、かぜや感染症、精神的なストレスによる過度の興奮のほか、外傷や腫瘍、血管障害といった、頭の中の器質的な異常です。
かぜや感染症、ストレスなどによる頭痛は、原因となる疾病が治癒すると自然に消失してしまい、繰り返したり慢性化することはありません。
ただし、突然強烈な痛みに襲われ意識がはっきりしなくなったり、慢性の痛みが急に強くなったり、頭痛が頻繁に起こるようになるときは、脳卒中や脳腫瘍といった、命にかかわる病気がひそんでいる場合があるので、医師の診断を受けるほうがいいでしょう。
急性期にしっかり治すことができなかったり、そのほかのからだの異常が原因となって、からだの活動の中心である五臓(肝・心・脾・肺・腎)のいずれかが傷つけられると、頭痛がくり返し起こったり、慢性化するようになります。
反復性・慢性の頭痛は、外から侵入したり体内の異常によって生まれた病因物質(「風・寒・熱・湿(痰)といった邪」)によって頭部の活動が妨げられたり、五臓の機能がおとろえ、全身の活動に必要な基本物質(「精・気・血・津液」)が不足することによって、頭が十分に滋養されなくなるために起こります。からだの機能のおとろえ(「虚」)に邪がつけ込んで起こるタイプは「本虚標実」の頭痛に分類します。一方、からだの機能おとろえによる滋養不足が原因となって起こる頭痛は、「虚」のタイプに分類します。
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