ピロリ菌と胃腸病
ピロリ菌と胃腸病
50才以上の方の60〜70%がヘリコ・ピロリ菌に感染し、多くは小児期に感染して、生涯持続します。胃潰瘍や十二指腸潰瘍はストレスが原因と考えらていましたが、多くはヘリコ・ピロリ菌の感染症であることが認知され考えが一変しました。更に胃癌の前癌病変ある萎縮性胃炎を促進する因子を有し、胃癌の関与も疑われて解明の研究が進められています。
萎縮性胃炎
胃癌の患者の殆どに、胃粘膜に「萎縮性胃炎」の併存が見られます。萎縮性胃炎とは、胃粘膜が薄くなった状態をいいます。萎縮性病変した胃粘膜はポリープや胃癌の発生の好発母地となっていることが判明しています。一方、血中ペプシノゲンは胃粘膜の萎縮性変化を鋭敏に反映し、萎縮の進行と検査値とがよく相関し、胃癌の早期発見の一次検診に有力な検査法です。
上部消化管疾患のヘリコ・ピロリ抗体陽性率は胃炎53%、胃潰瘍95%、十二指腸潰瘍で94%、胃・十二指腸潰瘍で95%、胃がんで93%、。消化性潰瘍の発生率は2〜3%です。
一方、ヘリコ・ピロリ抗体陰性群には、一部の例外をのぞいて「鎮静剤の長期服用者」や「萎縮が胃粘膜全体に広がり、腸上皮化生の出現で生息が困難になって、消失し、陰性化する」例があります。ヘリコ・ピロリ菌に感染すると体の免疫が働いて抗体ができます。
少量の血液で抗体を測定(EIA法)検査します。定量測定で精度も高く、簡便で安価です。この検査結果で、強陽性者は胃がん発生のリスクが陰性者の6倍といわれています。ヘリコ・ピロリ菌感染者全体の0.4%が胃がん発生のリスクです。現在、ヘリコ・ピロリ菌関与の「胃がん発生のメカニズム」について、内外の研究者により遺伝子レベルで解明されつつあります。
ピロリ菌
血液ペプシノゲン(PG)とは(PG:ペプシノゲン略語)
ペプシノゲンは、胃粘膜から産出される蛋白質で、一部が血液に含まれています。したがって、少量の血液検査で胃のペプシノゲン産出量を調べ、胃粘膜の病変状態をチェックすることができます。ペプシノゲン(PG)には2種類(PGT、PGU)が存在し、PGTは胃底部から産出され、胃酸の分泌能および胃壁細胞量と相関します。PGUは胃全体から産出され、加齢とともに増加し、60歳代でほぼ一定になります。胃粘膜の萎縮性変化は、胃粘膜の分泌機能低下や胃の老化現象で、胃粘膜が薄くなる変化をいいます。薄くなっつた胃粘膜に胃ポリープや胃がんができやすいのです。健康な胃にヘリコ・ピロリ菌が感染すると胃粘膜に炎症をおこし、血中PGT、Uともに増加し、更に萎縮変化で、PGTが低下し、PGT/U比も低下します。血液ペプシノゲンは胃粘膜の炎症や、萎縮の変化を鋭敏に反映する検査です。
血液ペプシノゲン法は胃がん1次検診に有効
胃がん患者の胃粘膜を調べると、殆どの胃がん粘膜に萎縮性胃炎が併存し、萎縮性胃炎の粘膜は胃がん発生の好発母地になっていることが判明しています。また、胃粘膜の委縮性が高い程、胃がん発生頻度も高いことが解りました。一方、血液ペプシノゲンの異常値は胃粘膜の萎縮の程度や広がりの病変をよく反映し、両者は高い相関性があることが認められています。したがって、萎縮性胃炎の有無を経過観察(検査チェック)することで、早期胃がん発見の契機となる有効性の評価が高まっています。