「鹿茸大補湯」は、漢方の古典といわれる中国の医書『傷寒論[ショウカンロン]』や『金匱要略[キンキヨウリャク]』に収載され、水毒によっておこる諸症状の治療に用いる代表的な薬方です。漢方では、胃内停水で過剰な水分があったり、尿量が少なく体液の調節がうまくいかず、体内の水分の偏在、代謝異常の症状を水毒といい、この水毒が神経質や頭痛、ふらつき、めまい、息切れ、動悸などをおこす大きな原因の一つと考えています。
めまい、ふらつきがあり、または動悸があり尿量減少する人の、神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛に効果があります。
虚労で少気する一切の虚損をなおすとあり、男性のインポテンツ、女性の不妊症、子供の発育不良、糖尿病、高度の貧血、病後の衰弱などに応用されます。鹿茸大補湯は、温腎補陽・健脾益気の剤が中心となっています。腎陽が不足、脾の運化が不足すれば陰液を生ずることができないため、補陰、補血の剤が配合されています。
処方名 | 鹿茸大補湯 |
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効能 | 温腎補陽・生精補血 |
解説 | 鹿茸・肉蓯蓉・炮附子・杜仲で補陽し、人参・黄耆・大棗・白朮・甘草で補気します。 半夏・茯苓・生姜で脾を健脾して脾運を高め固渋の五味子、また当帰・芍薬・地黄で補血します。 |
治療の現場から | 気虚の状態が明らかであれば補中益気湯を合方します。 虚寒で瘀血がある時は温経湯を合方します。 |
臨床応用 | インポテンツ・女性の虚寒による帯下、不妊症・病後の衰弱・耳鳴り・腰痛・神経痛。 |