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卵巣機能の低下に伴って起きる女性ホルモンの急激な減少は、なぜ心身にいろいろな症状を起こすのでしょうか。
ホルモンは、体の働きを常に安定させるように、臓器や組織の機能を調節する微量な物質です。内分泌腺といわれる特定のホルモンを産生する臓器から、体の内外の変化に対応するのに必要な量が分泌されます。脳の視床下部や下垂体にある中枢が血液中のホルモン濃度をチェックし、ホルモンの分泌量を抑制したり、促進したりしています。
さて、卵巣機能の低下で、女性ホルモンの分泌量が減少してくる私たちの卵巣に向けて、脳や下垂体はそれ以前にも増してアクティブに活動を開始します。不足してきた卵巣での女性ホルモンの分泌を促すためです。
しかし、今まで中枢の司令にこたえてバランスを回復できた私たちの卵巣は、加齢による機能低下によって、それに答えることができなくなっています。それでも下垂体は性腺刺激ホルモンというホルモンを分泌し続けて、卵巣に働きかけていくのです。
中枢と卵巣の間でホルモン分泌をめぐるかけ引きが繰り返され、その中枢の必死の努力は限界を超えると破綻をきたしてきます。
つまり、中枢のオーバーワークが更年期特有の症状を導き出しているといえるのです。
しかし、これは異常なことが起こったというわけでは決してなく、程度の差こそあれ、女性であれば誰でも迎える加齢による体の変化なのです。
・「ホルモン補充療法」について
女性ホルモンの低下に伴って起きてくるいろいろな症状や疾患を予防・治療しようという目的で、「ホルモン補充療法」が中高年女性の医療や更年期医療に取り入れられています。また、日常生活に差し支えるような更年期障害に対する治療の一つでもあります。「ホルモン補充療法」には、医師の判断と慎重な管理が必要です。
体の変化
女性ホルモンは、全身をその影響下に置いています。そのため、女性ホルモンの減少は、全身のいろいろな器官や臓器の変化に、直接関係が出てくるのです。
女性ホルモンが減ることによって起きる体の主な変化をみてください。
・自律神経が乱れてくる
・月経が不規則になる
・排卵が不規則になり、なくなる
・閉経する
・膣内の粘膜が薄くなり、潤いがなくなる
・膣の自浄作用が低下する
・排尿器官の括約筋や膀胱粘膜の萎縮が起きる
・皮膚のしわ、たるみ、しみ等がふえる
・皮膚にしびれ、かゆみ、蟻走感を感じる
・骨量が減少する
・皮下脂肪が厚くなり、体重が増加する
・動脈硬化をきたしやすくなる
・精神・神経症状が現れる
今まで健康であったあなたは、更年期の体の変化に驚きの気持ちを持ったかも知れませんが、更年期以降の健康維持、増進が、今までの成熟期とは違うケアに基づかなければならないことに、気付かれたのではないでしょうか。
不定愁訴
更年期に入った女性の多くは多種多様な不快な症状を訴えます。女性ホルモンの急激な変化とこれらの症状とは、密接に関連しています。その他に、その女性を取り巻く環境、心の持ち方や生活習慣なども、症状の内容や程度を左右する大きな因子となります。
診察や検査では、これといって問題になる所見やデータがないけれども、明らかに不快な自覚症状がある、そんな症状を不定愁訴とも呼び、更年期障害の代表的な症状とされています。
たとえば、最も多いのはホットフラッシュと呼ばれている顔のほてりやのぼせ。一日に数回、かっと顔がほてる。汗がどっと出たり、息切れがしたり。めまいや冷や汗、寝汗なども更年期の女性たちの多くが経験しています。
また、くよくよ考えたり、憂鬱になったり興奮したり、心理的、社会的なストレスや個人の性格や気質がからみあって、心理面や精神面の不調となって現れることもあります。
症状や程度は、人によって実にさまざまです。更年期症状を全く感じない人、いくつか重なって日常生活に支障をきたすほど強い症状が出る人など、更年期症状は、約八十%の女性が経験するといわれています。
男性更年期
卵巣機能が停止し、体が劇的に変化する女性のように、明らかな変化は男性の場合は見られませんが、加齢による全身の生理機能の低下は避けて通ることはできません。
この時期、多くの男性は社会的な活動の最盛期であり、また、人によっては家族構成の変化も起きたり、夫婦間の葛藤が表面化しやすい時期で、ストレスを受けやすい環境の中にいます。
そのために、男性も更年期の存在を自覚し、心身の健康を問いなおすことが必要でしょう。男性更年期はこちらを参考に |
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