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  漢方医学(中医学)による蕁麻疹の原因

生理機能と栄養素の調和が健康を保つ


   
蕁麻疹
現代医学による蕁麻疹の原因・治療・予防
漢方学(中医学)による蕁麻疹の原因
漢方医学(中医学)による蕁麻疹の治療と予防
   
1 生理機能と栄養素の調和が健康を保つ
  からだの活動は、栄養素を消費することによって行われています。この生理機能の面を「陽」といい、その基礎となる栄養素を「陰」といいます。陽は陰を消費して働くと同時に、陽の働きによって陰がつくられます。健康な状態では、このサイクルが正しく行われています。陽と陰を合わせて 「正気」といいますが、正気は、からだを健康に保つ生理機能であり、病気に対抗する能力でもあります。しかし、なんらかの原因で陽が亢進しすぎると、陰が必要以上に消耗されて不足するという病態になります (「陰虚陽亢」 )。この状態では、からだは相対的に熱の性質に傾き、陽は陰を消耗するだけで、陰をつくることができなくなるので、陰はますます少なくなります。
 こうした悪循環をくり返すうち、ついには生命の根源となる「真陰」をも損なうようになります。このような性質をもつ陽気を 「壮火」といいます。壮火は、すでに正常な陽気の性質を失い、病気の原因となる 「邪気」 に変化しています。血液の循環を乱し、血液の成分を変えて調和を乱し、病気をひき起こします。このとき、皮膚にも変化が起こりますが、これも蕁麻疹を発生させる内因になります。

2 病気は、生埋機能と病因が戦うために起こる
  蕁麻疹のメカニズムを理解するために、まず、中医学の疾病観について考えてみましょう。
 中医学では、病気は、健康を維持する正気と、正気を壊す、つまり陽と陰の調和を乱す邪気との戦いであると考えます。正気が勝てば邪気は追い払われるので健康を回復しますし、邪気が勝てば病気はますます重くなって、ついには死に至ることもあります。

蕁麻疹は生理機能と病因の勝負がつかない状態

 蕁麻疹は、正気と邪気の力が括抗して勝負がつかないため、症状が皮膚にとどまっている状態といえます。邪気を完全に追い払うには正気の力が不足しており、しかも、からだの奥深く侵人してより重い病気を起こすほど邪気の力は強くないという状態が、蕁麻疹として現れていると考えるのです。 したがって、正気の不足が主な原因となって起こっているのか、邪気の性質が執拗すぎるために起こっているのかを見分けて治療を行わなければ、よい結果は得られません。
3 蕁麻疹が起こるからだの状態と主な病因
 
皮膚の防御能力が落ちる理由

 皮膚は、環境に応じて、緊張したりゆるんだりします。それにしたがって汗腺を開閉したり、皮脂腺の分泌によって皮膚に潤いと栄養を与えながら、体温を調節し、外から病因が侵入しょうとするのを防いでいます。 中医学では、このような皮膚の生理機能を、正気の中でも特に「営衛の気」といいます。そのうち、「衛気」 (陽)は、機能の面を受けもっています。衛気は、血液中の栄養物質によって支えられており、これを 「営気」 (陰) といいます。皮膚を正常に保つためには、衛気と営気の調和が必要なのです。 なんらかの原因で衛気と営気の調和がくずれると、邪気が侵入しやすくなるだけではなく、邪気を追い払う力も低下します。衛気と営気の調和がくずれたり、衛気や営気が不足 (「虚」) することは、蕁麻疹を発生させる重大な要因となりますから、見逃してはならないのです。

蕁麻疹の主な病因は 「風」

 蕁麻疹の主な症状は、常にともなう痺みです。また、急性の蕁麻疹の多くは、突然現れ、突然消えます。このような症状をひき起こす病因を、中医学では 「風邪」 と呼びます。風邪は、「六淫」 (風・寒・暑・湿・燥・火) と呼ばれる病因のひとつです。 風邪のうち、たいへん細かく肉眼では見えない大気中の物質や、風による体温の急激な変化といった病因は「外風」と呼ばれます。また、体内の病理変化によって、血液の成分や体液の成分のバランスがくずれ、体内が慢性の脱水状態(「血虚」や 「陰虚」 )になると、風が生まれます。これを「内風」と呼びます。内風というのは、からだの大小の筋や筋膜の栄養と潤いが失われるために起こる痙れんやれん縮をさします。これが微細な血液の循環を乱して、さまざまな病態を発生させます。
4 慢性の蕁麻疹は病因が複雑にからみあって起こる
  慢性に経過する脱水状態(血虚や陰虚)のうち、血液の成分の異常によって風が生まれることを「血虚生風」といい、体液の成分の異常によって風が生まれることを「陰虚燥風」といいます。これらの風は、微細な皮膚の血液の循環を乱して、蕁麻疹をひき起こすようになります。 また、ふだんから美食を続けたり、お酒を飲みすぎたり、エビやカニ、魚や肉などを食べすぎたり偏食をしたりして消化器に負担をかけすぎると、消化しきれない飲食物がよぶんな水分(「湿」) となってたまります。 湿は時間の経過とともに熱を生み、熱と結びついて「湿熱」という邪気となります。湿熱は、胃に炎症を発生させ、血行の異常をひき起こします。これも蕁麻疹の病因となりますが、このようなメカニズムを「湿熱生風」といいます。

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