外科療法・・・癌と免疫力
外科療法・・・癌と免疫力
外科手術の場合は、癌の発生が一つの臓器だけに限られている時、それを全て切除してしまうことができれば、治癒の可能性はかなり高いのです。
臓器によっては、腎臓では片側を取ればその機能の70%は保てて、生活には差し支えありません。また臓器によっては、一時的に機能低下などが認められても、代償機能により機能改善があり、後遺障害のあまり起こらないものもあると言えるでしょう。しかし、このことは同時に臓器の一部分を失ってしまうという、大変恐ろしいことでもあるのです。臓器によっては、細胞が再生するものもありますが、肝臓くらいのもので、それも、元どおりとはいかないでしょう。手術後にその臓器の機能が一時的にでも低下することは避けられません。私たちの体で不必要なものはなにもありません。
喉頭癌であれば発声機能が、肺癌であれば呼吸機能が、胃癌であれば消化機能が、大腸癌であれば水分の吸収や排便機能が、腎臓・膀胱癌であれば排尿機能が、子宮・卵巣癌であれば生殖機能が、それぞれ低下、またはなくなるのです。臓器によっては、ホルモン分泌にも影響を及ぼし、免疫機能も低下させ、したがって、種々の後遺症が発生することも考慮して、できるだけ小範囲の切除にとどめなくてはなりません。ただ、癌には周囲に、さらに遠隔の場所へ転移するというやっかいな特徴があり、その危険性を避けるためには病巣だけでなく、病巣に関係する周囲のリンパ節まで含めて郭清(切除)することが必要です。しかし、大きな手術というのは体に大きな負担をかけてしまうので、人の体にとって大切な役割を持つ免疫機能をも低下させるという問題もあります。このことによって、癌治療のための手術や放射線治療・化学療法が免疫機能を含め、体のバランスをくずし、体の一般状態を低下させ、かえって悪化させてしまう場合もあるのです。また、目に見える癌細胞の塊である病巣は切除できても、周囲へ広がった目に見えない癌細胞は取り残してしまうかもしれない、という危険もあります。
外科療法でも、放射線療法でも、化学療法でも、どれをとってもリスクは免れない「つきもの」なのが現状なのです。
最近、行われている腫瘍内の温度を上げ腫瘍細胞を死滅、壊死に至らしめるという温熱療法や腫瘍組織を凝固させる方法などもあります。これとて、この療法だけでは治癒は望めず、他の療法と併用しなくてはならないのです。