|
|
老化と聴力の減退(耳聾 じろう)
中医学では、耳鳴と耳聾について「耳鳴は聾の漸(きざし)」といい、耳聾は耳鳴より重い病態と考えられています。耳鳴には必ずしも耳聾を伴うとは限りませんが、耳聾には耳鳴を伴うことが多いと思われます。耳聾には、突発性難聴(暴聾)のように突然に起こる耳聾もありますが、加齢による場合は聴力が徐々に減退していく傾向にあります。
■ 腎精不足
腎気は耳に通じており「耳は腎の外竅」と呼ばれており、「腰は腎の府」とともに、腎が正常に機能しているかどうかを知ることが出来ます。また、腎気が調和しておれば、五音(古代音楽の5つの音階)を聞くことが出来るとされています。
腎は精を蔵し、精は骨髓に変化します。髄は脳を満たし、耳の機能を維持します。「腎耳に開竅する」とは、このことを指しています。
精虚によって生じる耳聾は、聴力が徐々に減退していくものが多いようです。腎精は陰に属するので夜間になると耳鳴と耳聾が強くなる傾向があります。
六味丸が腎陰を補益する基本処方ですので、六味丸を長い期間使用することが必要です。陰虚で虚火が生じた場合は、柴胡加竜骨牡蠣湯か桂枝加竜骨牡蠣湯と合わせて用いることが必要でしょう。
腎陽虚を呈する耳聾は、顔面晄白、食事量が少なく、軟便気味、寒がりで四肢が冷たいなどの症状があり、八味丸を使用します。腎陽虚の場合、行水化気(水液代謝)が出来ず水湿が内停し、三焦にあふれるため、清陽が上昇できず耳聾を引き起こします。
真武湯、苓桂朮甘湯が用いられます。腎陽虚では、虚寒を呈するため、血行が悪くなるため、血絡瘀阻といわれる病態が発生し耳聾となります。 |
|