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脾胃の機能低下が慢性の疲労を生む |
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バイタリティの喪失、慢性の疲労の九つの症状は、実はすべて同じメカニズムから起こるものです。そのかなめとなるのが、人間のからだの中心部にある「脾胃」の機能です。
中医学上の脾胃は、脾臓と胃だけでなく、小腸や大腸の上部を含むと考えられています。脾胃は、人間が生きていくために最も大切な「食物を消化し、吸収する」という作業を行っています。
健康なときは、食物から吸収した栄養が脾胃のエネルギーによって、全身を駆けめぐっています。ところが、脾胃の機能低下が始まると、脾胃のエネルギーが不足し、食物から栄養を吸収することができなくなり、栄養物をからだ中にめぐらすことができなくなります。
その結果、あらゆる臓器や呼吸器などの機能に影響を及ぼし、さまざまな症状が現れてくることになるのです。中医学ではこの病理機序を「中気下陥」と呼んでいます。
単に胃腸が弱っているだけではなく、消化吸収した栄養をからだ中にめぐらせることができなくなって慢性の疲労を引き起こすというのが、この病気のメカニズムの要点です。
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慢性の疲労を放置すると万病のもとになる |
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日常生活を快適に、気分よく過ごせるということは健康である証です。ところが、過度のストレスや食生活の乱れなどが原因で脾胃の機能が低下し、その影響が全身に及ぶと、慢性の疲労を主な原因とするさまざまな症状が現れてきます。つまり、疲労感は脾胃の機能低下を知らせる合図なのです。
普通の状態であれば、一晩寝ると翌朝には体力・気力ともに回復して、すっきり起きられるものです。しかし、慢性的な疲労を訴える人は、全身のいろいろな機能も低下・減退しています。したがって、回復力が落ちているので、一晩寝たからといっても疲れはとれません。
疲労感も一時的なものであれば問題ありません。しかし、過度の疲労が続くような生活が改善されず、心もからだも疲れ果てた状態が続くと、からだの機能低下はさらに進み、それによって生じたさまざまな症状は悪化し、すぐには回復できない病気へと移行していきます。
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「太らない」のも「水太り」も栄養代謝不全が原因 |
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慢性の疲労は脾胃の機能低下によって引き起こされるため、まず胃腸に症状が現れるようになります。ただし、症状の現れ方はそれほど重くないのが特徴で、必ずしも消化力や食事の量、味覚といったものに、さほどの変化があるわけではありません。
例えば、胃が丈夫な人の場合、食べられる量は通常と変わりませんが、吸収力が落ちているために、うまく栄養代謝ができず、いくら食べても太らなかったり、逆に「重役腹」というような不健康な太り方をしたりします。また、食べ物がからだの役に立たず、すぐに外に出てしまうので、慢性的な下痢や便秘になりがちです。このように、症状の現れ方は体質や生活環境によって変わってきますが、原因はすべて脾胃に起因する「中気下陥」にあるのです。
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脾胃機能低下で「立ちくらみ」や「冷え」が起こる理由 |
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脾胃の機能低下から立ちくらみが起こるという不思議な気がしますが、消化吸収がうまく行われず、エネルギーが不足して栄養物が全身をめぐらなくなると、頭部にも影響が出る場合があります。これが、慢性の疲労に伴う立ちくらみです。高熱の時に見られるようなめまいと違って、症状はあまり激しくなく、何となく頭が空虚な感じがするといった状態になります。
また、同じ原理で冷えが起こることもあります。エネルギー不足による冷えは比較的症状が軽く、異常に手足が冷たかったり、極端に寒さを感じてしまうというものではありません。
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エネルギー不足で筋肉や皮膚が緩む |
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消化吸収されたエネルギーは、からだの中をめぐりながらさまざまな仕事をしています。血液や汗などが不必要に漏れないようにしたり、内臓を所定の位置にしっかりと収める「固摂作用」もその役割のひとつです。これはからだの内側の筋肉の緊張を高める作用のことです。 胃下垂や子宮脱、痔なども、もとをたどれば脾胃機能の低下によるエネルギー不足から起こった、からだの内側にある筋肉の緊張低下から引き起こされた病気なのです。
同じ原理で、汗腺のコントロールも難しくなり、必要もないのに汗が出るようになります。この汗は、新陳代謝が激しいためにかく汗とは全く異なるものです。からだに必要な栄養分が体外に汗となって出てしまっているのですから、からだにいいわけがありません。
また、皮膚も緊張が緩んでつやが失われ、からだに必要な熱まで奪われやすくなるために、かぜをひきやすくなります。度々かぜをひく人は、普段から補中益気湯を服用しておけば、かぜの予防にもつながります。 |
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