花粉症の増加はスギ花粉の増加だけが原因ではない
現在、花粉症は社会問題になるほど増加しています。西洋医学では、その原因の一つに、スギ花粉の大量発生をあげています。これは、花粉症が最初に流行した年が、スギの植林が盛んだった年の30年後、つまりスギが最も多く花粉を飛ばす時期に当たっていたという説に基づくものです。
しかし、都市部の方が罹患率が高く、ほかの風媒花・虫媒花による花粉症や、以前より症状のひどい人が増えていることなどは、スギ花粉の増加だけでは説明がつきません。最近では、花粉症には、栄養の偏りや添加物が多い食生活、生活環境の悪化、さらに精神的ストレスなどがかかわっているという考え方が主流になってきています。
花粉症の診断法と治療に使われる西洋薬
花粉症の診断は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの程度や、目・のど・耳の症状を参考にして、鼻粘膜診や鼻汁細胞診、アレルゲンを捜し出すための皮膚反応検査、鼻誘発検査、血清抗体検査(RIST法、RAST法)によって行われます。 治療に用いる薬は、局部薬(点鼻薬)、全身薬(内服薬)ともに、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤、ステロイド剤などがあります。
それぞれの薬の効果と副作用
花粉症の症状は、鼻に飛び込んだ花粉に、鼻粘膜の表面にある肥満細胞などが反応し(抗原抗体反応)、ヒスタミンなどの化学物質が現れて起こります。 副作用が比較的少ない抗ヒスタミン剤は、ヒスタミンの働きを抑えます。しかし、ヒスタミンだけを抑えれば症状がすべて消えるわけではありませんし、眠くなるという欠点もあります。これはほかの抗アレルギー剤にもいえることです。 ただし、最近では眠気を起こさない薬も開発されるようになりました。また予防的に抗アレルギー剤を用いて症状を軽減させる方法も効果があります。
血管収縮薬の入った点鼻薬は、使い過ぎると鼻粘膜や鼻中隔に炎症を起こすことがあります。また、成分中のエフェドリンにも副作用の危険があります。 いずれの薬も、症状や体質に合ったものを使用し、時には頓服して使うなど、上手に利用することが大切です。
アレルゲンが特定できれば減感作療法は効果的
以上のような対症療法以外に、「減感作療法」という治療法があります。これは、皮内反応やスクラッチ・テストでアレルゲンを確かめ、少量のアレルゲン抽出液を繰り返し注射し、反応を抑える抗体をつくっていく治療法です。 アレルゲンが特定できれば効果が期待できますが、人によっては発疹や喘息が誘発されてしまうこともあります。
治りにくい小児のアレルキ゛ー。注意必要な妊婦の花粉症
花粉症を含めたアレルギー性鼻炎の症状は、からだの防衛力が高まれば、かなり軽くなることがわかっています。 以前なら、子供の場合、成長して体力がつくと症状が改善されることが多かったのですが、最近では、小学生でも塾通いや受験勉強などで睡眠不足や疲労気味になったり、栄養のバランスを崩したりしているため、アレルギー疾患が治りにくくなっています。 女性の場合は、抵抗力が落ちる妊娠中に症状がひどくなることがあります。減感作療法は妊娠中でも続けることができますが、服み薬の中でも胎児への影響力が大きいものは、服用を一時中止しなくてはなりません。 こういう場合は、症状を悪化させないために、花粉の飛散が多い日は窓を開けない、洗濯物や布団を外に干さない、外出時にはマスクをつけるといった、生活上の注意が必要になります。
中医学の理論や薬に期待が寄せられている
このような背景から、西洋医学の現場でも、からだの生理機能に着目した中医学への関心が高まっています。 中医学を参考に、飲食に関するアドバイスをしたり、鼻粘膜の色や冷え、肩こり、胃腸症状などを診ながら、温める方がよいか、少し熱を冷ます方がよいかという判断をしたうえで薬を出すという工夫もしているとのことです。 このように、花粉症のより効果的な治療に向けて、中医学の考え方や薬に期待が寄せられているのです。