中医からみた原因 最大の原因は老化。
からだの衰えに発病因子がつけこんで、痛みがおこる 関節や四肢の痛みを、中医学では「痺証」といいます。痺は、発病因子である「風邪」「寒邪」「湿邪」「熱邪」などの「病邪」が、からだの活動に必要な基本物質である「気」や「血」の流れを妨げた状態をいいます。
ひざの痛みも痺証のひとつですが、中でも、
①中年以降におこりやすく、男性より女性に多い、
②ひざ以外に痛みがない、
③安静時は痛みが軽いか感じない、
④歩いたり、階段を昇り降りすると痛みが強くなる、
⑤経過が長く治りにくい、
⑥炎症性の症状はほとんどなく、温めると痛みがやわらぐ、といった特徴をもつものは、更年期障害と同じように、老化によって「腎」と「肝」がおとろえることが根本的な原因となっておこります。
中医からみた原因 腎は、生命活動のおおもとを蓄え、からだを温め、膝の働きにかかわる
腎には、たいせつな働きが二つあります。
ひとつは、飲食物が消化・吸収されてできた栄養分を、成長・発育・老化・死といった生命活動の原動力となる「精」という物質に変えて、たくわえる働きです。
精には、物質面である「陰液」と、機能面である「陽気」があります。陰液と陽気が協調してはじめて、精は正常に働くことができます。陰液から陽気をつくるのも、腎の働きです。
もうひとつは、全身を温めて水分代謝を行いながら、精を、全身のエネルギー源となる気・血・「津液」につくり変える働きです。
からだの衰えだけでは、痛まない。有害な水分や冷えが、引き金になる
腎の働きが衰えると、二つの問題がおこります。
ひとつは、精が不足するという問題です。精が不足すると、気・血・津液を十分につくることができなくなり、その結果、ほかの内臓の働きも悪くなります。
腎の働きが衰えると、まっ先に影響を受けるのは、肝です。肝は、からだの働きや血液の循環量を調節し、筋膜や腱に栄養や潤いをあたえ、「肝腎同源」といわれるほど、腎と密接な関係があるからです。
もうひとつは、水分代謝がうまくできなくなるという問題です。その結果、からだの中に有害な水分が生まれるようになります。
こうして腎と肝の働きが衰えると、気や血が不足し、これにつけこんで風邪や寒邪、湿邪が侵入して、ひざの痛みがおこります。