婦人科

子宮膣部びらん・・・子宮の異常

子宮の炎症性の病気 子宮の腫瘍

子宮ガンの検診や、人間ドックが普及しているので、びらんという言葉は、ほとんどの人が耳にしたことがあるでしょう。たとえば、「びらんがあるので、半年に一回は子宮ガンの検査をしたほうがよいでしょう」とか、「おりものが多いのは、びらんがあるからです」とか「この出血は、流産のためではなくて、びらんからの出血でしょう」といった具合に、婦人科の診察を受けると、たいていの場合、びらんという言葉が出てくるものです。
そして、一般的には、びらんがあると子宮ガンになりやすい、というふうに認識されており、「びらんがありますね」といえば、「子宮ガンは大丈夫でしょうか」との質問がすぐに返ってくるほどです。
それほどよく知られたびらんでも、子宮膣部という、膣の奥深くのいちばん突き当たりにある部分にできるものですから、実際に、自分の目でみて確かめることはできません。したがって、たいへんなびらんがあるといわれても、手足の傷や、やけどのただれを目でみて驚くほどにはぴんとこないようです。実際に自分の目でみることができたとすると、だれでも気持ちが悪くなるようなただれの状態となっているのです。
びらんは、子宮膣部の扁平上皮がすっかりはがれてしまって、粘膜下の組織が丸出しになっている真性びらんと、粘膜下の組織が円柱上皮の薄い膜でおおわれている仮性びらんと、二種類あります。びらんといわれるものの大部分は、仮性びらんに属するものです。
原因は、先天性のものと後天性のものがあります。後天性のものは妊娠、分娩などによって頸管が外にめくれたようになって、頸管の円柱上皮が子宮膣部にまで露出するようになった場合、子宮頸部が肥大したために、子宮頸粘膜が下垂してきて、外方にあらわれている場合などに起こります。
症状は、肉眼的には、赤くただれたようにみえて、診察の際に綿でふいただけで、簡単に出血します。びらん面からは、いつでも分泌物が多くて、ねっとりした、おりものが多く出ています。そのおりものに雑菌が感染したときには、びらん面の炎症が強くなって、さらにおりものが増加して、増加したおりものによって、いっそうびらんがひどくなるといった悪循環がみられることもあります。
びらん面は、綿でふいても出血するくらいですから、性交による刺激で出血することもあります。いきんだときや、ときには、特別なきっかけがなくても、ときどきおりものに血がまざることがあるのも、このびらん面からのことが多いのです。
しかし、びらんを持っていても、ほとんど無症状で過ごす人が大多数で、検診のときなどにいわれて初めて知るくらいです。成熟女性では、びらん面の広さの程度が違っても、九〇%ぐらいの人にびらんがみ受けられるほど多いものです。
症状があるにしろないにしろ、これだけ多く女性が、子宮膣部びらんを持っているのです。さらに悪いことには、この子宮膣部は子宮ガンの好発部位なのです。このことからびらんと子宮ガンの発生の間には、何らかの関係があるのではないかと考えられるのです。
子宮ガンの初期では、肉眼的には、びらんとほとんど区別ができませんので、婦人科医はびらんをみつけると、子宮ガンの検査をするのです。また、びらんがあっても、無症状の人が非常に多いので、定期的なガンの検診が非常に大切な意義を持っているのです。びらんの程度によっては、一年に二回ぐらいは検診を受けるほうがよいでしょう。そうすれば、ごく初期の子宮ガンでも、手遅れにならずに発見することができるからです。
びらんがあると、おりものが多くなり細菌が感染しやすいために、炎症が強くなります。したがって、びらんそのものの治療は別としても、膣の洗浄や、抗生物質の膣錠を使うことによって、炎症をとることができます。炎症がなくなっただけでも症状は軽くなります。
しかし、びらんそのものは、薬によってはなかなかなおるものではありません。電気焼灼といって、電気メスでびらん面をきれいに焼きとってしまって、そのあとに健康な上皮が形成されるのを待つ方法があります。
同じような理由ですが、冷凍手術によって、びらん面を凍らせて、取り去り、そのあとに健康な上皮が形成されるのを待つ方法もあります。また、外科的に、びらん面を切り取ってしまう、スツルムドルフ氏手術を行う場合もあります。

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