中国の医療事情
経と自律神経系の異常による症状
「更年期障害」という用語は、現代医学が入ってきてから使われるようになりました。中国の婦人科の教科書では「更年期症候群」や「閉経症候群」などとして、症状が分類されています。
中医師は、閉経前に月経異常が起こり、それにともなって自律神経系の異常によるさまざまな症状が起こる場合に、更年期障害と診断します。また閉経後は、2~3年までのものを更年期障害と診断しています。
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相火妄動が、判断のポイント
更年期障害では、①月経周期、②経血量、③月経期間のいずれかに異常が起こります。これに、自律神経系の異常による諸症状が加わります。
更年期障害はさまざまなメカニズムによって起こりますが、私たちがよく経験するのは、肝腎陰虚が進行して起こる相火妄動の症状です。
老化によって腎がおとろえると、肝に影響がおよんで肝腎陰虚の状態になり、月経異常を引き起こします。一方、陰が不足すると相対的に余った陽が熱になり、肝と腎の生理機能(相火)が異常な働きをするようになります(相火妄動)。相火妄動でよくみられるのは①衝脈伏火、②相火上亢、③心腎不交です。
①衝脈伏火:熱のために月経をコントロール衝(任)脈の機能が亢進して、月経周期が短くなったり、経血量が多く、期間が長くなります。
②相火上亢:肝腎陰虚のため、相対的に余った陽が火となって上昇するので、頭を中心に上半身の症状が現れます。
③心腎不交:腎陰虚によって、火(陽)と水(陰)の関係にある心と腎のバランスがくずれ、心の機能が亢進するため、不眠や多夢、イライラ、動悸といった症状が起こります。
治療は、症状をおさえる標治を主に、症状が落ち着いたあとで肝腎を補う本治を行います。よく使う方剤は
六味丸や
杞菊地黄丸、
知柏地黄丸のほか、
加味逍遥散、「
霊田七」、
柴胡加龍骨牡蛎湯などです。