生理痛に対する漢方の考え方
月経痛には、二つのタイプがある
からだを構成し、活動エネルギーのもととなる、非常に細かい滋養物質は「精」「気」「血」「津液」といいます。中医学では、病気を引き起こす原因(「病邪」)によってこれらの流れが悪くなったり(不通)、精からつくられる気・血・津液が不足すると(不栄)、痛みが起こると考えます。これが月経痛の基本的なメカニズムです。
また、病邪や病理産物によって症状が起こることを「実」、滋養物質の不足や内臓(「臓腑」)の機能失調によって症状が起こることを「虚」といいます。したがって、病邪によって起こる気血不通の月経痛は「実痛」、滋養物質の不足によって起こる不栄の月経痛は「虚痛」に属するといえます。
気や血の不通によって起こる月経痛
不通の月経痛は、環境の変化(「風・寒・暑・湿・燥・熱(火)の病邪」)、臓腑あるいは気血の道路網(「経絡」)の機能の停滞(「気滞」)、血流の停滞(「血瘀」)、正常な水液の停滞によって体内で生まれた湿(「痰飲」)などのために、経絡の流れが悪くなって起こります。月経開始日前から下腹部が脹ったように痛み始め、月経開始後におさまります。下腹部をおさえると不快で、弦を張ったようにしっかり脈をふれます。補う性質の薬を使うと、かえって痛みがひどくなります。主に若い方や、ふだん元気な方の多いがこのタイプです。
血液の滋養作用が不足して起こる月経痛
不栄によって起こる虚の月経痛は、気や血、津液などが十分につくられない(「気虚」「血虚」「陰虚」「陽虚」)ために、経絡が滋養で満たされなくなって起こります。また、虚の体質になると、気や血、津液をつくることができなくなります。脹った痛みは少なく、痛みは月経開始後に始まり、月経が終わっても続くこともあり、おさえたりさすると楽になります。脈は無力です。病邪を追い出す薬を使うと、逆に痛みが悪化します。元気がない方や、慢性病で体力の落ちている方、老化が始まった中年の方によく見られます。
しかし実際には、虚と実の両面が同時に見られる「虚実挟雑」の状態で起こり、実だけ、虚だけで起こることはほとんどありません。また、侵入した病邪(「外邪」)によって月経痛が起こることは少なく、多くの場合、体内が虚の状態になるために生まれる病邪(「内傷」)によって起こります。
冷えと熱も痛みに影響する
月経痛では、虚実だけではなく、寒と熱の区別も重要です。なぜなら、寒熱によって、からだの物質面(陰)と機能面(陽)、つまり陰陽失調の状態を知ることができるからです。
主に、顔面蒼白・寒さをきらい温暖を好む・手足の冷え・おなかの冷え・尿が透明・下痢といった症状は寒、顔面紅潮・温暖をきらい寒さを好む・発熱・尿が濃い・便秘といった症状は熱によって起こります。