高血圧や更年期障害の頭痛漢方治療
精が血に変化し、血が精から生まれ、腎が精をたくわえるように、肝と腎は密接な関係にあります。このため、この状態が続くと、肝で生まれた熱が腎精を傷つけ「肝腎陰虚」が起こります。このとき、おさえの効かなくなった肝の機能が亢進し、必要以上に上昇するので、頭の活動が乱され頭痛が起こります。中年以降、高血圧症や更年期障害のときによく起こる頭痛です。
この頭痛は、しばしば頭の左側に起こります。これは、肝から出発する血や津液の通り道(「経絡」)が頭の左側を通っているからです。また、一日の中では、太陽が昇る午前中に痛みが強くなる傾向があります。
さらに、精神の興奮や怒りっぽい、めまい、耳鳴り、頭の脹った痛み、顔面紅潮、目やに、目の充血、不眠、動悸、弦を張ったような細い脈、舌が紅く黄色い苔がつくといった、からだの上部の熱症状と、腰痛やひざの無力感、冷えといった、下部の冷えの症状をともなうのが特徴です。
このときは、肝と腎の精や津液、血を補って肝の機能の亢進をおさえながら熱を冷ます「天麻鈎藤飲」や「鎮肝熄風湯」を、症状が軽いときは「杞菊地黄丸」(殆どの方がこの処方だと思います)を使います。
なお、消化吸収機能が肝の疏泄失調の影響を受け、腹の脹りやげっぷ、からえずき、四肢の冷え、首から肩にかけてのこり、強くおさえると弦を張ったような脈をふれるといった症状をともなうことがあります。これは、胃が冷えて機能が低下し、消化がうまくできなくなるために生まれた病因物質(「寒飲」)がからだの上部にかたよって機能を亢進させ、頭部の活動を乱すからです。
疏泄機能を正常にして血行を回復させ、胃を温めて寒飲を除きながら機能を回復し、症状をおさめる「呉茱萸湯」がいいでしょう。