病状や進み方の違いには体の抵抗力や体質が関係
現代医学では、ウイルスの種類によってウイルスの種類によってウイルス肝炎を分けていますが、中医学ではこのような分類をしません。肝炎の症状の程度や進み方は、ウイルスよりも、体の抵抗力や体質の違いに大きく影響されると考えるからです。
また、中医学には、「病因となる有害な物質(ウイルス)がからだを侵そうとしても、からだの抵抗力が充実していれば発病することはない」という原則があります。ウイルスに感染しても、健康のレベルを十分に保っていれば発病することはないのです。これがいわゆる「キャリア(保菌者)」の状態です。
肝炎は、消化器全体の病気
中医学では、ウイルス肝炎は単に肝臓だけでなく、胃・膵臓・肝臓・胆嚢・小腸といった消化器「脾・胃」と「肝」の病気と考えています。
肝は、肝臓だけでなく、自律神経系・ホルモン系・内分泌系・胆汁の分泌・視覚系・女性の生理機能など、幅広い働きを含んでいます。特に大切なのが、血や気の流量を調節して全身の機能がスムーズに働くようにしたり、血液を蓄えるといった自律神経系の働きです。
また、脾は乾き、胃は湿っており、いつも協力しながら飲食物を消化して吸収し、エネルギーや栄養物質、水液に変えて全身に送る働きを持っています。 肝や脾胃の働きが乱れ、肝炎が進むメカニズムを順を追って説明していきます。
肝炎の原因は「湿熱」
病因となる有害な物質のことを、中医学では、「邪」と呼んでいます。邪には、外から侵入してくるものと、からだの機能に問題があるために発生するものがあります。
肝炎ウイルスは、湿気と熱が結びついた「湿熱」という邪と考えられます。湿は水のように重く、下に向かう性質があります。熱は、火のように軽く、上に向かいます。このように、相反する性質を持つ湿と熱が結びついたものが湿熱です。 しかし、侵入してきた湿熱だけで発病することはまれです。たいていの場合、体内で生まれた余分な湿矢熱に反応して発病すると考えられています。
消化吸収の乱れが肝炎の引き金になる
脂っこいものやアルコールをとり過ぎたり、暴飲暴食を続けていると、消化・吸収力が乱れてきます。すると、栄養分が十分に利用されずに「余った水」となり、ふだん乾いている脾に湿が生まれます。逆にいつも消化液で潤っている胃の働きが乱れて乾燥すると、胃に「燥熱」がうまれてしまいます。
同じ肝炎でも、人によって湿よりも熱の症状が強かったり、逆だったりするのは、このように、体内にある湿や熱の量に違いがあるからです。
肝炎の症状
全身がだるくなり胃腸病のような症状が現れる
肝炎にかかると、まず肝が筋肉をコントロールできなくなります。そのため、筋肉に湿が入りこみ、全身がだるくなります。下に向かう湿の性質のため、特に足がぬけるように重だるくなるのが特徴です。また、脾胃は肝と関係が深いので、胃腸の症状も同時に現れます。
湿が多い場合は、頭が重く全身がだるい、胃がつかえる、食欲がない、口が乾くが飲みたがらない、泥状便、尿が黄色く少量などの症状が現れます。ねつが多い場合は、発熱、のどが渇く、胸苦しく吐き気がする、おなかが張る、便秘、尿が濃く少量といった症状が現れます。
肝の働きが乱れると、やがて、脇腹がはって痛む、憂鬱、抑うつなどの症状が加わります。さらに熱が上に向かい、頭痛・目が赤くなる、耳鳴り、口が苦い、イライラなどの症状が現れます。
また、代謝が乱れるので、血の流れも停滞し、さまざまな病理的産物が生まれて、肝臓そのものが病気の状態になります。これが肝硬変です。「腎」に影響が及ぶので、治療がとても難しくなります。