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不安神経症と漢方治療

感情を表現することによって臓腑の生理機能が正常に戻る

感情には「喜」「怒」「憂」「思」「悲」「恐」「驚」の七つがあります。これを「七情」といいますが、このうち、心と喜、肝と怒、肺と憂、脾と思、腎と恐のように、特に五臓と関係の深いものを「五志」といいます。
 情志の変化につれて生理機能が変化すると、顔の紅潮や蒼白、手の指の震えや弛緩、食欲亢進や低下などの反応が現れます。しかし、刺激の程度が軽く、全身の機能が正常なら、情志を表現することによって、刺激が解消され、生理機能は正常に戻ります。
 でも、刺激が強すぎたり、刺激を受ける時間が長すぎると、臓腑の協調とバランスが崩れます(「実証」)。
この状態が続き、気や血、津液や精をつくって全身に送る働きが低下するようになりますと、(「虚実挟雑証」あるいは「虚証」)心の気や血、陰液が損なわれ、心神の異常によるさまざまな症状が現れてきます。人体の陰陽のバランスが限界を超えて変化するので、陰陽の失調を正常に戻せなくなります。こころの病いは、こうして始まります。
 言い換えると、実証は臓腑機能の乱れや欝滞が主で「鬱証」に相当し、まだ基本物質の損傷がないか少ないものを指します。これに対して虚証の多くは、すでに五臓の機能失調が基本物質を損なっている状態です。そのうち鬱証がいっそう進んで起こったものには「実」が残っており、「虚実挟雑」もみられることになります。原因が取り除かれても臓腑の機能失調が残る様になります。