中国の医療事情 不安感や恐怖感の診断と治療
不安感や恐怖は、五臓の異常
不安感や恐怖感は、五臓が病むために起こる症状と考えます。どちらも同じメカニズムで起こりますが、恐怖感の方が重い症状です。不安感や恐怖感の中でよく見られるのは、対人恐怖と、乗り物などの閉所に対する空間恐怖です。
①対人恐怖:知らない人に会うと、胸がドキドキしたり、気持ちが高ぶる、不安になる、顔や耳が赤くなる、汗が出るといった症状が現れます。
②空間恐怖:乗り物に乗ると、トイレに行きたくなるのが特徴です。登校拒否や出社拒否のほか、脳血管障害後遺症や老人性痴呆症なども、このタイプと考えられます。また、対人恐怖と空間恐怖に共通する症状としては、暗いところを嫌う、孤独感に襲われるなどがあります。
肝虚痰鬱
①肝虚痰鬱:動悸や疲労、頭がグルグルまわる、めまい、不眠、胸苦しさ、イライラといった症状をともないます。このような症状は、肝気が不足しているために起こります。この場合は、肝気を補いながら痰を除き、気のめぐりをよくするために、
補中益気湯と
柴胡加龍骨牡蛎湯、痰が少なければ
小建中湯を使います
腎精虧損
②腎精虧損:動悸やめまい、不眠、胸苦しさ、イライラなどの症状に加えて、もの忘れがひどくなるのが特徴です。脳血管障害後遺症や老人性痴呆症にともなう不安感や恐怖感は、腎精虧損が原因です。この場合は、腎の機能を高め精を補うために
八味丸あるいは
十全大補湯を使用します。痰が多い場合には、さらに
二陳湯で痰を取り除くと効果的です。
脾腎両虚
③脾腎両虚:動悸やイライラ、おなかの脹りとむかつき、食欲不振、めまいといった症状をともないます。 このように、脾腎の陽気が不調なために水分代謝がうまくいかなくなって起こる症状があるときは、
扶陽理中顆粒に
二陳湯や
半夏白朮天麻湯が良いでしょう。