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慢性的にくりかえすひざの痛みの診断と治療 |
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元気がない人のひざの痛みは脾胃や肺の働きを高めて抵抗力をつけ、有害な水分を除いて治療します。
老化のために腎の働きが次第に衰えると、脾胃と肺の働きが衰えます。
そのため、皮膚の働きをを正常に保って病邪の侵入を防ぐ「衛気」の力が弱くなり、抵抗力が低下するだけでなく、発汗を調節する働きも乱れて、からだの中で有害な水分が生まれます。
ひざの痛みとともに、むくみやすい・からだが重い・元気がない・汗が出やすい・疲れやすい・息切れ・声が小さく聞き取りにくい・食欲不振・尿量が減る・大便が泥状・汗が出やすい・軽い寒けがあり、風にあたるのをいやがる・かぜをひきやすい、といった症状がみられます。
このような状態では、風邪とともに湿邪が侵入しやすく、ひざがはれてむくみ、ひざに水がたまることがあるほか、舌の色が淡く白い苔がつき、脈が「緩」になります。
この「風湿」タイプのひざの痛みは、脾胃と肺の働きを助け、衛気を補って抵抗力を高めるとともに、有害な水分を尿として除く「防已黄耆湯」で治療を行います。
腫れやむくみなどがなく、痛みだけがあるときは、脾胃の働きを補いながら全身の元気をつける「補中益気湯」を使います。
栄養と潤いが不足しておこるひざの痛みは、血行を回復して治療する
腎の働きが衰えて、精から血をつくることができなかったり、ストレスや慢性病、出血などが原因になると、栄養や潤いが不足する「血虚」の状態になります。
このとき、雨にぬれたり、湿度の高い環境に長時間さらされたりすると、気や血の流れが滞るようになります。そのため、しびれをともなって、ひきつるようなひざの痛みが続くようになり、血行が悪くなるほど、痛みはとくに夜間に強くなり、じっとしていても痛むようになります。
このような「血虚風湿」タイプのひざの痛みは、皮膚につやがない・筋肉が強くひきつる・ものがぼやけて見える・髪の毛がやせてつやがなくなる・頭がふらつく・舌が淡い色になって白い苔がつく・脈が細緩などの症状をともないます。 月経や出産などによって血虚になりやすい女性に多くみられます。
治療は、風邪と湿邪を除きながら血を補って血行を回復する「疎経活血湯」で行います。痛みがあまり強くなく、尿が出ない・むくみなどの症状をともなうときは、血を補って肝の働きを整えるとともに、脾胃の働きを高めながら湿邪を除く「当帰芍薬散」が効果的な場合があります。
腎の栄養や潤いが不足したときは「水のおおもと」を補う
老化によって腎の働きが衰えると、陽気と陰液の協調が失われます。
このうち、陰液が不足する「腎陰虚」の状態になると、からだの上が熱く下が冷えるようになるため、ひざが冷えて痛み、温めたりさすると痛みがやわらぐようになります。また、めまい・耳鳴り・イライラ・口が乾く・上半身がほてる・腰がだるい・ねあせ・脈が細で脈拍が速い・舌がやや紅い、といった症状があらわれるほか、陰液の不足が進むと、やせる・舌の色が紅く光ったようにみえるなどの症状も加わるようになります。
治療は、「水のおおもと」である腎の陰液を補う「六味丸」で行います。
また、イライラやねあせなどの熱症状が目立つときは、熱を冷ます力の強い「知柏地黄丸」、目のかすみや視力減退などの「肝陰虚」の症状が加わったときは、腎と肝の潤いを補う「杞菊地黄丸」が効果的です。
冷えが非常に強いときは「火のおおもと」を補う
一方、腎の陽気の衰えが激しくなったときは、からだを十分に温められなくなるため、全身がいつも冷えた状態になります。
このような「腎陽虚」の状態では、元気がない・顔色が青白い・寒がる・頭のふらつき・耳鳴り・腰やひざに力が入らず、冷えて痛む・手足の冷え・むくみ・尿が透明で多い・夜間頻尿あるいは排尿困難・舌がはれぼったくなって淡い色になり、つるつるした苔がつく・脈が「細遅」、といった症状があらわれます。さらに陽気の衰えが進むと、むくみがひどくなり、不消化の下痢あるいは明け方の水様便・呼吸困難などの症状をともなうようになります。
治療は、「火のおおもと」である腎の陽気を補う「八味地黄丸」や「牛車腎気丸」で行います。腎や肝の働きを高めるとともに、精や血、気を補い、冷えや有害な水分である「寒湿」を除く「鹿茸大補湯」などもいいでしょう。
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