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「トイレの悩み」や「目のかすみ」など、中高年になると現われる症状を漢方では「腎虚」と呼んでいます。漢方でいう腎とは、腎臓だけではなく、副腎、生殖器、内分泌系まで含めた稔称で、「成長から老化」という人間の一生をコントロールする源と考えられています。
このエネルギーの源である腎の働きが悪くなると、おしっこのキレや勢いが悪くなり残尿感がつきまとう、夜中トイレに起きる、目が疲れやすくなり小さな文字が読みづらくなる、下半身が冷える、腰や下肢が痛む、疲れやすくなり腰から下に脱力感を覚える、といった症状が現われます。
腎虚には大きく2つのタイプがあります。1つは身体全体のエネルギーが不足する「腎陽虚」型。エネルギーが不足すると温める力が弱くなるので、冷えを訴えます。そのため水の代謝が悪くなり尿の異常が現われるようになります。
トイレの異常は最も代表的な腎虚の症状です。腎虚になると、なぜ、夜中トイレに起きるようになるのでしょうか。
昼は定期的に尿意を催しますが、夜寝ている時には、尿の生成を「抗利尿ホルモン」によって抑え、尿意を催さないようになっています。尿の生成にはホルモンが関係しており、眠る必要があるときには利尿を抑えようとするわけです。しかし、腎虚になると全身のホルモン活性が低下するだけでなく、抗利尿ホルモンの活性が落ち、夜中トイレに起きるようになるのです。
尿をコントロールするホルモンバランスが乱れているので、昼間は頻尿傾向になります。このようなホルモンの異常を漢方では腎の病態ととらえています。
こうした症状に最も適した漢方薬が「八味地黄丸」です。優れた補腎効果で頻尿や排尿困難を改善。おしっこの症状だけではなく、冷えや疲れ、下半身の脱力感といった症状にも効果的です。
但し、上記の症状に加え、腰痛や下肢痛が強い場合には水分代謝が悪化していると考えられます。その際は、八味地黄丸に血行を促進する牛膝と水分代謝を整える車前子を加えた「牛車腎気丸」をおすすめします。
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