【効能】 |
清熱瀉下・活血逐瘀 |
【適応症】 |
下腹部の痛みや圧痛あるいは抵抗・不正性器出血・月経困難・便秘などの症候があり、下肢の冷え・下腿静脈怒張・外痔核などあるいはのぼせ・頭痛・肩こり・鼻出血・不眠・動悸などをともなうこともあります。舌質は紅~紫・舌苔は黄・脈は渋。発熱性疾患の経過にみられます。
下腹部がたく脹って痛む(少腹急結)・圧痛・抵抗・便秘(あるいはテール便)・排尿には異常がない(あるいは血尿)・不正性器出血などの症候で、熱は夜間に高くなり、甚だしい場合には意識障害や狂躁状態を呈します。舌質は紅でやや乾燥・舌苔は黄・脈は沈実。 |
【類方比較】 |
桂枝茯苓丸:痰湿や貧血傾向が少なく、下腹部の自発痛、圧痛がより顕著な場合に用います。(瘀血の証)
加味逍遥散:精神不安、不眠などの神経症状や熱証があって、多彩な愁訴をより強く訴える場合に用います。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯:四肢冷感が一層顕著で、腹部、腰部・下肢が痛む場合に用います。 |
【解説】 |
桂枝は、血管拡張により諸薬の吸収を促して効能を高め、同時に鎮痛にも働きます。
桃仁は、主に骨盤内腔の血管拡張によりうっ血を除き血腫の分解、吸収に働きます(活血化瘀)。
大黄も、骨盤内や腸管、腸管膜の血管を拡張して充血させ、桃仁の効果を補助します。大黄・芒硝は、大腸性の瀉下作用により、糞便を除き、腸管内の毒素の吸収をブロックし、代謝産物の排泄を強めます。
これによって活血化瘀の効果が強められます(逐瘀)。桃仁も、油性成分により糞便を軟化してこれを助けます。桂枝は、主に動脈側の血管拡張により血行を促進し、活血化瘀の効果を補助します。また、消化液の分泌、蠕動の促進などにより吸収を強めます。
甘草は、諸薬を調和させ、作用の行き過ぎを抑えます。大黄は、消炎、抗菌に働きます。 |
【治療の現場から】 |
★桂枝茯苓丸:下腹部の抵抗、圧痛が比較的軽度の場合に用います。標準的駆瘀血剤。
★当帰芍薬散:冷え性、血色不良の人で、腹壁が軟弱で、下腹部の抵抗、圧痛が一層軽度の場合に用います。血虚と水毒の証。
★加味逍遥散:気血両虚で肝うつ化火(いらいら、のぼせ、はてりなどの熱証)をともなうものに使用します。婦人科疾患とともに自律神経の過興奮を呈するものが目標です。 |
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左下腹部(左腸骨窩)に多くみられ顕著な圧痛・擦過痛を伴う抵抗ないし束状抵抗が多くみられます
※この目標に必ずしもこだわる必要はありません。 |
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【使用上の注意】 |
軟便下痢の人には使用しません |
【臨床応用】 |
習慣性便秘・自律神経失調症・更年期症候群・打撲・冷え性・頭痛症・肩こり症・鼻出血・高血圧症・月経困難症・月経不順・産後の悪露停滞・骨盤内血腫・骨盤内炎症・子宮内膜炎・附属器炎・外痔核・下腿静脈瘤・開腹術や人工流産の後・腸管癒着・腸閉塞の初期などで、下焦の血オを呈するもの。あるいは発熱性疾患で、蓄血証を呈するものに使用します。 |