更年期と臓腑
『素問』では、男性の場合、56歳で天癸が竭きるとされ、この前後を目安に更年期になります。腎気が衰え、天癸が竭き、気血が枯れるという生理変化が現れてきます。その結果、腎陰の不足によって虚火が昇る病態と、腎陽が虚衰して経脈を温陽できない病態などの、陰陽の平衡が乱れた状態が起こります。もし、この時期、患者の体質が虚弱だったり、精神的ストレスの影響を受けたりすると、心・肝・脾の臓腑機能が乱れ、心血不足、肝の条達失調、脾の健運失調などが起こります。
心血不足
心を濡養できず心神不安をきたした状態です。心神不安では、不安感、健忘、不眠、心悸などです。
治法は、養血安神で、帰脾湯、
人参養栄湯などを用います。
肝の条達が失調(肝気鬱結)
精神的な抑うつと肝経走行部位を中心に発生する気滞の症候です。憂うつ、楽しくない、時にイライラ、胸や脇の脹った痛みなどです。気滞が持続し、痰と結びつくと咽の梗塞感となり、吐いても飲み込んでもとれない「梅核気」となることもあります。
治法は、疏肝解鬱で
半夏厚朴湯、
逍遥散、
加味逍遙散などを用います。
脾の健運失調(脾胃気虚)
運化の減退と元気不足が同時にみられます。疲れやすく元気がない、食欲不振、腹満、泥状便などです。
治法は、健脾益気、
六君子湯などを用います。