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五月病

五月病

アパシーシンドロームとも呼ばれる
 厳しい受験戦争や入社競争の末、ようやく念願の大学・会社に入ったものの、爽やかな5月を迎え、急に勉強や仕事に身が入らなくなり、何をするのもおっくうで嫌になってしまう。新人に見られるこのような症状は、いつの境からか「五月病」と呼ばれるようになっています。五月病は正式な医学用語ではなく、「自律神経失調症」「軽症うつ病」「適応障害」、あるいは専門医の間では、無気力(アパシー)を主な症状とすることから、「アパシーシンドローム(無気力症候群)」といわれることもあります。

 五月病は、環境変化に対する自己防衛丈応と考えられています。競争を勝ち抜き、希望を胸に入社(学)したものの、思い通りの成果を上げられず、理想と現実とのギャップに直面してしまう。その結果、自己防衛反応の一つとして無気力症状が発生するのです。

 5〜6月に特に多くなるのは、この時間は日照時間が延び、ホルモンや自律神経のバランスが崩れやすいからです。
五月病の症状はさまざまです。頭痛、めまい、肩こり、疲れやすい、動悸がする、意欲低下、睡眠障害といった症状のほか、気分の落ち込み、何事にもおっくうになる、イライラする、気力がわかない、思考力の低下など精神的な症状も伴うことが少なくありません。
 五月病を防ぐには、ストレスをためないようにすることですが、実際にストレスから身を守るのは容易なことではありません。

ストレスが多様化する現代社会

私たちの体には、外部からのストレスに反応して生体を守るシステムが備わっています。ストレッサー(刺激)が加わると、大脳の視床下部を経由して自律神経系と内分泌系とに情報が伝わります。自律神経は呼吸や血圧を一定に保つように働くほか、内分泌系は各組織に働きかけ、体内のホルモンバランスを正常化し生体としての恒常性を保とうとします。
 ところが、こうした刺激が長期にわたって続いたり、限度を超える強い刺激が加わったりすると生体の恒常性を維持できなくなり、さまざまな不調が現われるようになるのです。もちろん、同じストレスを受けても、影響を受けやすい人と受けにくい人とがいます。

 どのような人がストレスによって病気になりやすいのでしょうか。
 1つは過労などによって体の抵抗力が衰えている人です。抵抗が弱まると、自律神経系の調整能力が低下し、ストレスの影響を受けやすくなるので過労は禁物と言えます。また、生まれつきストレスに対する耐性が弱い人もいます。日ごろから体質が虚弱で、胃腸が弱い、下痢をしやすい、乗り物酔いしやすい、といった人が該当します。
 性格もストレスに影響を与えます。一般的に、神経質で凡帳面タイプ、完ぺき主義者、物事をまじめに考える優等生タイプ、周囲に気を使いすぎる、とった人がストレスに弱いと言われています。
 症状が一過性の場合は、それほど深刻になることもないでしょう。しかし、こうした症状が進行すると、重いうつ病や神経症に移行するだけでなく、免疫の働きが低下して病気にかかりやすくなるとも言われています。そうなると、ドクターの診察を仰がなくてはなりません。できるだけ早い時期に病気の芽を摘むことが大切なのです。

五月病には漢方薬がお勧め

五月病など自律神経失調症や心身症・神経症の薬物療法としては、抗うつ薬や抗不安薬が使われますが、最近では、漢方療法の効果に注目が集まっているようです。

よく用いられる代表的な漢方薬には、加味帰脾湯柴胡加竜骨牡蛎湯があります。
 加味帰脾湯は、慢性疲労に伴う不眠症によく用いられます。胃腸の働きを良くしながら不眠を改善する作用があり、年をとってから眠れなくなった方やデリケートな女性などにお勧めです。
 一方、柴胡加竜骨牡蛎湯は、ストレスなどでイライラしがちで、寝つきが悪い方の不眠症によく用いられます。竜骨(古代哺乳動物の化石)や牡蛎(カキの殻)といった天然のカルシウムが配合されていることも特長の一つで、自律神経の働きを調整しながらストレスに伴う不眠症や精神不安を取り除きます。
 ストレス対策には「休養」と「気分転換」が2つの柱です。ストレスや疲れが軽いうちは気分転換が有効ですが、ストレスレベルが高く体全体のエネルギーが低下しているときには、まず休養することを心がけましょう。
 眠れない、イライラする、疲れが抜けないといったストレスからくる「体のサイン」を見逃さず、心の健康づくりにお役立ていただきたいと思います。