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前立腺肥大症と漢方薬

「年のせい」とあきらめている人も多い前立腺肥大症

若いときには勢いよく出ていたオシッコが気持ちよく出なくなる、トイレが近くなって夜中に何度も起きてしまう。一中高年を迎えるとともに、こうした「オシッコ」に関する悩みが多くなりまも特に男性の場合には、その原因の多くは前立腺の病気が背景にあると考えられます。
 最も代表的な前立腺の病気は前立腺肥大症でも前立腺は男性だけにありまも膀胱のほぼ真下にある栗の実ほどの大きさの器官で精子に栄養を与える前立腺液を作ったり、膀胱の出口を開閉したりする役目を担っています。
 腺という名称が付けられているように、前立腺はさまざまな腺組織の集合体で右前立腺肥大症は、その腺組織が増殖して大きくなり尿道を圧迫している状態を言います。程度の違いはありますが、加齢にともなってどんな人にも肥大は見られるようになります。
 50歳以上では5人に1人、65歳以上になると3人に1人が前立腺肥大症になると言われます。これは頻尿や排尿困難、残尿感、尿閉といった前立腺肥大症特有の症状を持つ人の数値で、65歳以上の高齢者の腺組織を顕微鏡で調べたところ、70%が肥大していたという数値もあります。
 前立腺肥大症の症状は大きく2つに分けられます。1つは尿が出にくくなる「閉塞症状」。もう1つは肥大した前立腺が膀胱を刺激して起こる「刺激症状」です。

治療

前立腺肥大症は、一般的に頻尿(夜間頻尿も含む)から始まり、やがて残尿感や排尿困難などの症状が付随して起こり、慢性的な尿閉へと至ります。症状を悪化させないためには、何よりも早期治療が大切です。
 治療には、症状を緩和するα1遮断薬や肥大を小さくする抗男性ホルモンなどによる薬物療法、マイクロ波で肥大した部分を小さくする高温度療法、さらに内視鏡を用いた手術などの方法があります。
 症状が軽い場合には薬物療法が中心となりますが、最近では医療の現場でも漢方薬が盛んに用いられています。最も汎用されているのが、おなじみの八味地黄丸です。頻尿や排尿困難といった初期の前立腺肥大症に効果があることが各種の学会でも発表されています。

前立腺の病気に対する日常生活での注意点

前立腺は男性ホルモンの影響を強く受けることが研究で明らかになっています。このため、もともとエネルギッシュに活動する男性的な人ほどかかりやすいと言われています。

東洋人より欧米人のほうが発症率が高いという調査があります。このことから、高脂肪・高たんばくの欧米型食生活が原因の一つと考えられています。栄養過多に気をつけるとともに、激辛食品やアルコールの取りすぎにもご注意を。刺激物の過食・過飲は前立腺を充血させ尿道を圧迫する要因になります。

便秘は前立腺疾患を悪化させる因子の一つとされています。その理由は、便秘になると排便する時に「いきむ」状態になりやすく、それが前立腺を圧迫するため便秘はよくないとされています。便秘を改善するためにも、ふだんから食物繊維や野菜・根菜類を中心にバランスの良い食生活を心がけましょう。

日夜間尿が気になる人は、夜遅くなってからの水分摂取はできるだけ控えるようにすることが大切です。但し、水分を減らそうとするあまり、日中も水分を控える方がいますが、これはよくありません。夜間頻尿は、基本的に肥大した前立腺が膀胱を刺激するために発生する過敏反応の一つです。尿の量が多いために起こる現象ではないので、水分摂取量を減らすことが治療につながることはありません。また、水分を控えすぎると、脱水によって腎臓に悪影響を与えたり、尿が濃くなって尿路結石の原因を作るなど、高齢者にとって見過ごせない病気を引き起こすことになります。

参考

頻尿
1日の総尿量は同じだが回数だけが増える症状。前立腺肥大が膜胱を刺激し、尿意を感じやすくなるために起こる。夜間頻尿もその一症状。

尿意切迫感
がまんできないほどの激しい尿意を催す症状。間に合わずにもらしてしまう切迫性尿失禁を伴うこともある。

尿線が細い
尿の勢いが弱く、細くなる症状。2本に分かれたり切れ切れになったりして、ズボンや床を汚す。

排尿困難
オシツコをしようとしても、なかなか出てこない症状。肥大によって尿道が圧迫され、狭くなるために起こる。

尿閉
膀胱に尿がたまったまま出なくなる症状。重篤な場合は細い菅を入れて尿を出す「導尿」を施す。1000cc以上たまることもある。