にんにく健康法
古代エジプト時代からの強壮剤
ユリ科の多年草であるにんにくは、中央アジアが原産で、古くから、香辛料や強壮剤として知られてきました。古代エジプトのあの巨大なピラミッドを造るときにも、労働者たちが愛用した、とピラミッドの内部に記されています。
アフガニスタン、中国朝鮮をへて、わが国に渡来したのは約2000年前のこと。しかし、禁欲を説く仏教思想に反するため、一般にはあまり普及しませんでしたが、その効能は大いに認められていました。「漢方全書」にも、発汗、解熱、呼吸器病、ゼンソク、百日ぜき、健胃、腹痛、下痢、食中毒、貧血、利尿、腎臓病、心臓病、婦人病、吐血、カリエス、神経痛、中耳炎、神経痛、腰痛、肩こり、老眼、その他しらくもや水虫に至るまで、内科、小児科、皮膚科、外科などのほとんどの痛気に効果をあらわすと書かれています。
主な有効成分はアリシンとスコルジニン
にんにくの有効成分については、1940年代に、アメリカのガパリット氏やスイスのストール氏によってアリシンおよびアリインが、1936年代に日本の故小湊潔博士によってスコルジ
ニンが発見、抽出され、ようやくその一部が明らかにされました。 悪臭のもとアリシンに殺菌作用がある
にんにくはなぜくさいか
にんにくはきずをつけなければほとんどにおいませんが、ちょっとでもきずをつけると強烈な悪臭を発します。
これは、にんにくの組織が外部からの刺激で破壊されると、有効成分のアリインが、にんにく中の酵素アリナーゼによってアリシンに変わり、強い悪臭を出すためです。
アリシンは抗菌性を持つ
にんにく臭のもとのアリシンには、強い抗バクテリア作用があることが明らかになっています。実験によると、アリシンを含むにんにくの揮発油は、12万倍に薄めても、チフス菌やコレラ菌に対する抗菌力を持っているそうです。このほか、カゼや扁桃炎、気管支炎の原因になる連鎖菌、ブドウ球菌、赤痢菌やさらに抵抗力の強い結核菌
やライ菌にも、抗菌力を示します。
アリシンは不安定
こうした抗菌力を持つアリシンも、空気にふれると数十秒で分解され、抗菌力もぐっと
落ちるので、生食する場合は、おろしてすぐ食べることです。
また、にんにくをいためたり焼いたりすると悪臭が減るのは、アリインをアリシンに変える酵素のアリナーゼが熱に弱いため破壊され、アリシンのできが少なくなるからです。したがって、加熱するとにんにくの抗菌力は弱まります。
無臭のスコルジニンには広範囲の強壮作用がある
にんにくには、疲労回復や新陳代謝の促進作用を持つ無臭のスコルジニンも含まれています。
スコルジニンを与えたねずみと、与えないねずみを水の中に入れた場合、スコルジニンを食べたねずみは、食べなかったねずみが力尽きて死んでからも、4倍もの時間泳いでいたということです。また飼育実験でも、スコルジニンを与えたねずみは、目覚ま
しく成長発育することがわかっています。
その他、各種の実験から、スコルジニンについては、次のようなことが明らかにされています
体組織を若返らせ、新陳代謝を盛んにする
スコルジニンには、強力な酸化還元作用があって、体内に入った栄養物を完全に燃焼させてエネルギーにするため、次のような好結果を得ることができます。
●心臓筋肉に作用して、拍動を増強する。
●呼吸を促進させる。
●末梢血管を拡張する。
●平滑筋に作用し活気づける。
●胃液の分泌を旺盛にし、消化を促進する。
●組織内に蓄積する老廃物や毒素を酸化分解して、体外に排出する。
以上のように、強壮、疲労回復、食欲増進、解毒、抗アレルギーに貢献するわけです。体内に入るとビタミンのような働きをする これはスコルジニンからビタミンの一種ができるからで、また、スコルジニンとビタミンBlを併用すると、Blの腸内破壊を防止し、血液の中にとどまっている時間を長くします。ホルモン系統を刺激して精力を増強する。このように、スコルジニンには、すぐれた薬理効果があるのです。
すばらしいにんにくの効能
殺菌力のあるアリシンと、強壮強精力があるスコルジニンの働きで、にんにくはさまざまの効能をあらわします。
疲労回復に スコルジニンの旺盛な新陳代謝作用によるものです。
食欲不振に スコルジニンの働きとともに、料理に使用したときの香ばしい香りが食欲を刺激するのです。
カゼに カゼはウイルスが原因の呼吸器系の炎症です。アリシンが抗菌作用を発揮し、スコルジニンの働きで呼吸が楽になるうえ、強壮作用によって体力がつき早くよくなります。
結核に 昔から結核療養所では生にんにくが用いられていたようですが、アリシンの抗菌作用とスコルジニンの効力を経験から会得していたものと思われます。結核特効薬のパス、ストレプトマイシンにスコルジニンを併用すると、より抗菌性を増すことが明らかにされました。
冷え症・不眠症に
にんにくを食べると、スコルジニンが末梢血管を拡張するため、全身の血行がよくなって体があたたまり、眠くなるので、冷え症、不眠症によいのです。特ににんにく酒は卓効があります。
寄生虫に にんにくの強い成分が回虫などの寄生虫に一種のマヒ作用を与えるので、駆除によいといわれています。事実、にんにくをよく食べた昔の結核患者には、寄生虫患者が少なかったそうです。
かっけに かっけはビタミンBl欠乏症。スコルジニンがビタミンと同じ作用を持つうえ、ビタミンBlの効力を高める働きをするため有効です。
神経痛・筋肉痛に
スコルジニンが神経組織の新陳代謝を促進したり、末梢血管の循環をよくしたり、筋肉自体の活動状態をよくするので、これらの痛みが消失します。
動脈硬化・高血圧の予防に 動物実験によると、スコルジニンを与えたねずみは、血中のコレステロールが下がっていることがわかり、人間の動脈硬化や高血圧の予防にもよいのではないかと考えられています。
にんにくのタブー5ヵ条
にんにくはいわば「もろ刃の剣」食べすぎたり、まちがった食べ方や使い方をすると、かえって有毒です。
@食べすぎないこと 生なら1日に1かけ、加熱したものは2かけ。子どもはその半量を目安にします。
A空腹時に生は禁物 生にんにくの強い成分は、胃粘膜を刺激しますから、空腹時に用いると胃痛を起こし苦しむことがあります。
B過食は貧血のもと 食べすぎると、にんに〈の精油によって赤血球に溶血作用が起こるため、血色素中の鉄が遊離して貧血のもとになります。体重50kgの人では日12g以下(2かけ程度)が妥当で安全な量です。
C生にんにくの長期服用は禁物 私たちの腸内にはビタミン生産菌といって、ビタミンB2・B6、ビオチン、イノシントール、パントテン酸などのビタミンを作る菌がいます。ところが、生にんにくの強い抗菌力がそれらの菌の繁殖まで抑えてしまうため、長期間食べているとビタミンB2欠乏となって、舌炎、口角炎、口唇炎、皮膚炎などが起こりやすくなります。ひどく疲れたときやカゼのひきかけに、1日1かけとる程度に。
D外用は肌荒れを起こしやすい 生にんにくの刺激が強いことはたびたび述べましたが、皮膚の過敏な人やアレルギー性の人は、にんにくを塗ったりはったりするのは禁物です。外用薬として使う場合は、腕の内側の肌などで試してからにします。