【出典】 |
神農本草経 下品 |
【別名】 |
地文(チモン)、水玉(スイギョク)、守田(シュデン)、珠半夏(シュハンゲ) |
【成分】 |
ホモゲンチジン酸(homogentisic acid)、エピデリン(ephedrine)、アミノ酸、精油成分、多糖類、粘液質などを含む |
【効能】 |
鎮嘔、鎮吐、鎮静、鎮咳、去痰、唾液分泌亢進
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【薬理作用】 |
和胃止嘔・燥湿去痰・散結消腫
制吐作用・催吐作用・鎮静作用・眼圧低下作用 |
【臨床応用】 |
- 嘔吐に、制吐作用を利用する。湿邪による嘔吐に効果がある。古人は経験的に、“胃寒による嘔吐には半夏が最適である”としている。臨床では、以下のような嘔吐に使用する。
- 急性消化不良症による嘔吐で、心窩部がつかえて苦しいときに用いる。
- 慢性胃炎による嘔吐で、上腹部痛・曖気・食欲不振などの脾胃気虚の症状をともなうときに使用する。
- 妊娠嘔吐に用いる。
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- 去痰に用いる。咳嗽・多痰・白く粘稠な痰・胸腹部が苦しいなどの湿痰の症状(慢性気管支炎・気管支拡張症にみられる)に使用する。頭痛・咳嗽・多痰・ときによだれを吐く・寒がる・寒さをきらう・眩暈などの痰厥頭痛の症状に対して用いる。
古人は経験的に、“足の太陰(脾経)の痰厥頭痛は半夏でなければ治療できない”としているが、この面での半夏の作用機序は去痰・鎮静であると考えらえる。
- 生半夏をつぶして化膿症に外用すると、神経末梢に対して麻痺作用があるらしく、痛みが止まる。また皮膚炎には生半夏を酢とすりつぶした汁を使用する。
(附)急性緑内障による頭痛・眼痛・悪心に対しては、半夏で対症的に治療できると述べている人もある。実験的に眼圧低下作用があるためである。
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【性味】 |
味は辛、性は温。有毒。 |
【帰経】 |
脾・胃経 |
【処方】 |
小半夏加茯苓湯、半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、温経湯、五積散、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、参蘇飲、大柴胡湯、釣藤散、二朮湯、二陳湯、麦門冬湯、半夏白朮天麻湯、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯など |
【用量】 |
9~12g |
【使用上の注意】 |
- 半夏の性質は辛燥で、咽乾・舌のしびれなどの副作用がある。生半夏の性質はさらに激しく、咽喉の刺激・舌の腫脹・失声・嗄声などの中毒症状が発生するので、一般に十分に炮製してから使用すべきである。実験によると、明礬・生姜で炮炙したときには、明礬は動物に対する半夏の発声障害を除去し、生姜は半夏の制吐作用に協同的にはたらく。“半夏を炮製すると薬力が低下するので生半夏を用いるべきで、副作用の緩和には生半夏を砕いて生生姜に10分ぐらい漬けるだけでよい”と主張する人もいるが、一般に内服するときは生半夏は使用すべきでない。寒痰による呼吸困難・咳嗽で生半夏が必要なときには、生姜を多量に加えて毒性を弱めるとともに去痰・鎮咳の作用を強めるべきである。
- 姜半夏(法半夏)は燥湿・去痰・制吐の力が強いので、脾湿(脾気虚のため水分代謝が障害されて生じた“湿”)による胃内の分泌物停滞(痰飲)・唾液が多く嘔気をともなう寒痰によく用いる。
清半夏は辛燥の性質が非常に弱くなっているので、虚弱で痰が多く・寒湿の程度が軽いときに適している。このほかに清半夏と小麦粉を発酵させて作った半夏麹があり、辛平・微甘で温胃化滞・解欝の効能があるので、腹が脹り嘔気をともなう脾胃気虚に適する。
- 川貝母との比較:両者とも去痰作用があるが、半夏は辛温で湿痰に、川貝母は苦涼で熱痰に適している。また、半夏は(茯苓を配合して)胃中の痰を、川貝母は(陳皮を配合して)は胃中の痰を除く。一般には、川貝母と半夏を併用すると去痰の力が全面的で強力になる。
- 陰虚・熱証・出血・肺燥で痰が喀出しにくいときなどには用いるべきでない。寒湿が原因でない咳嗽・痰・嘔吐には用いるべきでない。妊婦には用いない方がよいが、状態に適合しているときには用いてもよい。ただし法半夏を使用すべきで、紫苑・括楼皮で代用してもよい。
- 半夏を服用して中毒症状があらわれたときには、砂糖で漬けた生姜片を服用するか、生姜を砂糖漬けにした汁を飲むと緩解する。
- 習慣的に半夏と烏頭の配合は禁忌とされているが、最近のいくつの実験によると、半夏と烏頭を混合して動物に投与しても重篤な反応は起こらない。
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【産地】 |
中国、韓国、日本 |