冬虫夏革の由来
冬虫夏草とは、昆虫寄生菌の名前。学問的には昆虫に寄生する子嚢菌類の総称であり、冬の土に潜入した昆虫に寄生し夏になるとキノコの姿を変えて草のように身が地上に現れるため、「冬虫夏草」と名づけられたのだ。つまり、冬虫夏草は生きた昆虫に寄生して虫の内部細胞を見事に分解し、それを栄養源として成長してきたキノコです。
昆虫に寄生する昆虫寄生菌という広い意味での冬虫夏草は、日本だけでも860種類以上が発見されていますが、現在の薬用または健康食晶として用いられているのは、主に中国の四川・雪南・青海・甘粛・チベットからネパールの3000~4000mの高山地帯に分布したコウモリガの幼虫(イモムシ)から生成した品種を指しています。その学名は、Cordyceps
sinensis(コルジセブス・シネンシス)です。
この薬用あるいは食用の冬虫夏草に関しては、チベットの薬物書である『甘露宝庫』(1400年頃)に初めて収載されており、清朝時代の医学書『本草従新』(呉儀洛,1757年)に漢文で最初記載されたとみられています。そして,1722年に北京で布教活動をしていたイエズス会宣教師がヨーロッパの友人に宛てた手紙の中に「冬虫夏草を買うにはその4倍の重さの銀が要る」との記述があり、当時でも冬虫夏草が高価で珍重されていたことが伺えられます。
ところで、10年前の最近までに、冬虫夏草の名は日本であまり馴染みがなかったのです。
1993年の8月、ドイツのシュッツガルトで開催された世界陸上選手権で、馬俊仁コーチの率いる中国選手たちが世界の強豪を相手に1500メートルで金メダル、3000メートルで金銀銅を独占、1万メートルでも金銀を獲得しました。次いで9月に開かれた第7回中国全国運動会では、馬コーチが指導した王軍霞選手が、1万メートルでの世界記録を42秒も締めた大記録で優勝するなど、チームの全員で11項目の世界新記録を出したのです。また、同年のスペインで開かれた第5回ワールドカップ大会の女子マラソン競技では、トップから4位まではすべて馬コーチが指導した中国選手が独占されました。
当時、中国の陸上遵手たちは嘗て世界的に無名の存在だったことより、1つの大変な話題となり、「馬軍団」として有名になりました。さらに、中国選手たちの強いパワーは秘密のスタミナ・ドリンクにあることが世界にも報じられそのドリンクのなかには,冬虫夏草が入っているそうである。それで冬虫夏草も、馬軍団という呼び名とともに一挙に世間で脚光を浴びて有名となってきたのです。