冬虫夏草応用のポイント
冬虫草または虫草をも処方名としてきた冬虫夏草の薬性は、甘味で温性であり，温和な滋補剤です。その帰経は肺と腎経に入り、主に補肺気・止咳喘・益腎精・強筋骨・抗老衰などの効能を持ちます。
『本草従新』：保肺益腎、止血化痰、労嗽を治す。
『薬性考』：秘精益気、専ら命門を補う。
『柑園小儀』：数枚を酒で浸って服用すれば、腰膝の痛みを治し、益腎の功がある。
『現代実用中薬』：肺結核、老人の虚弱的慢性咳嗽や喘息、吐血、寝汗、自汗などに適用し、貧血、衰弱、遺精、老人の鼻水が多い多涙などの病症にも用いられる。
冬虫夏草の中医学的応用は，これまで下記の2つのポイントが挙げられます。
1．冬虫夏草で肺気を補う
咳嗽や喘息、特に労嗽（慢性虚弱性の空咳）に使われ、そう理（皮膚の汗腺およびその附属器）を固めて、虚汗（陽虚による自汗，陰虚による盗汗）を治します。およそ肺虚による咳喘、あるいは肺腎両虚による咳喘が止まらなく、呼吸困難の患者には、人参・胡桃肉と併用し、肺と腎を補い、納気平喘を図ります。 肺陰虚損で労嗽痰血には、阿膠・麦門冬・貝母などと配合して、補肺養陰・化痰止咳・止血に用いる。 陽虚による自汗・多汗の場合、冬虫夏草を薬膳にして常食したり、黄者・人参・白朮などと併用して汗止めの効果を強化させたりします。陰虚こよる盗汗には、生地黄・熟地黄・黄耆などで滋陰益気で止汗させます。
２．冬虫夏草で腎精を補う
腎中の精気を補益し、腎気不足によるインポテンツ・遺精・腰膝の痛み・無力とだるさなどの病症に応用されます。臨床においてはよく菟糸子・沙苑子・巴戟天などと併用する。近代以来、多くは病後の虚弱改善、または抗老衰に使われます。
冬虫夏草の薬理学的研究
免疫系に対する影響
冬虫夏草に含有するグルタミン酸は、免疫抑制作用を持ちますが、冬虫夏草中の多糖類は免疫増強作用を持ちます。
①免疫器官であるマウスの脾と肝臓の重量を増加させる作用。
冬虫夏草の菌糸体は、特に肝硬変患者の免疫異常の改善に優れた調盤作 用を示しています。
②単核一食食細胞（マクロファージ）の貪食能力を向上させます。
③マウスの細胞免疫機能を抑制する作用を呈します。
④ステロイドと協調した体液免疫を影響する作用。
⑤マウスのNK細胞を活性化させる作用。
循環器系に対する影響
①実験動物の心拍数を減少し、静脈注射する場合は血圧にも降下する作用がみられます。
②冬虫夏草の水溶液は抗酸欠作用と心筋に対する保護作用を示しています。
③菌糸体の抽出液が抗不整脈作用がみられ、犬の冠脈血流量を増加する作用を呈します。
血液および造血系に対する影響
①造血機能の促進作用と、薬物の造血器官に対する損傷を対抗する作用
②血小板数の増加と血小板の生成を促進する。菌糸体のアルコール抽出液は強い抗血小板凝集作用を持つ。
抗腫瘍作用
虫草酸と虫草多糖は、腹水ガン・鼻咽ガンなどのマウス腫瘍に抑制作用を示します。また、虫草菌末には、人の鼻咽腫瘍細胞の生長に対して抑制作用がみられます。
中枢神経に対する影響
①鎮静・催眠作用：マウスの自発的活動を減少し、数種類の睡眠薬の鎮静作用を強化する効果がみられます。
②抗痙攣作用：菌糸体の抽出液はマウスに顕著な抗癌単作用を示しています。動物の腸管・子宮・心臓などの筋肉を弛緩します。静脈内投与により血圧下降を生じます。
③菌糸体の抽出液がマウスの皮下注射で顕著な体温降下作用を示しています。
代鮒に対する影響
水抽出物は雄マウスの空腹血糖値を顕著に向上させますが、アルカリ性抽出物は正常および糖尿病モデルのマウスに顕著な血糖降下作用を持ちます。
泌尿器系に対する影響
①ゲンタマイシンによる急性的腎捜傷に保護作用，腎小菅の修復と腎機能の改善に促進作用を呈します。
②ラットの慢性腎不全モデルには死亡率を降下し、貧血症状の改善およびBUNと血Cr値の降下作用を示しています。
内分泌系に対する影響
①去勢した雄ラットの精嚢を増量させ、雄性ホルモン様作用を呈しますが，抗雄性ホルモン模作用も示しています。
②血中ステロイドの含有量を増化する作用を持ちます。
呼吸器系に対する影響
ハムスターの気管支には拡張作用を示し、鎮咳作用と気管支平滑筋を弛緩する作用を持ちます。気管内を浄化し、咳や疲には有効。
抗ストレス作用
各種の原因による酸欠状態には括抗作用を呈します。
抗老衰作用
心・腎・脳の過酸化には一定の抑制作用を示し、マウスの肝臓組織のSOD含有量を増やして、ラットとマウスの脳内MAOの活性化を抑制作用をもちます。
抗炎症・抗痛原菌・抗放射線作用
プトウ球菌・連鎖球菌・炭症菌・結核菌・表皮癖菌などの皮膚真菌には抑制作用を持ちます。アルコール抽出液は1/10万以下の濃度でも結核菌を抑制します。