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飲食物を消化吸収するのは「脾胃」の働きです。もともと脾胃が虚弱だったり、食生活の不摂生、ストレスなどが影響すると、脾胃の機能が低下して水分代謝が悪くなり、からだに必要のない有害な水分が生まれ、集まって発病因子(痰飲)に変わります。この痰飲によって心の血液の流れが滞ると、胸の痛みが起こります(「痰濁内阻」)。また、水分代謝には「腎」も深くかかわっているので、老化などによって腎の働きがおとろえると、水分代謝がうまくいかなくなって、痰飲が生まれやすくなります。
もともと胃腸が虚弱で消化吸収力のおとろえやすい人や、水分代謝の機能が低下しやすい人に起こりやすい胸の痛みです。
このときは、重苦しい胸の痛みが起こります。雨が降る前のように、湿度が高くなると痛むのが特徴です。これは、体内にある痰飲が、同じ性質をもつ湿気を引き込んで心の血液の流れをさまたげる力が強くなるからです。
透明で水っぽいたんがたくさん出たり、食欲不振や疲労倦怠感などの症状をともない、白くうるおいのある舌苔あるいは白くべっとりとした舌苔がみられ、エキス剤では、苓桂朮甘湯と二陳湯の併用をいたします。
また、水分代謝の失調が進むと、からだの熱のために痰飲が粘稠になって(「痰熱」)、胸がムカムカして気分が悪くなり、たんが切れにくくなってきます。舌苔が白くべっとりとして、舌の表面がぬれているのに乾燥したようにみえ、玉をころがすように滑らかな脈をふれるときは、脾胃の働きを高めて水分代謝を正常にし、痰熱を除く「温胆湯」を使います。さらに熱の勢いが強くなってたんがますます切れにくくなり、大便が乾燥したり、黄色くべっとりとした舌苔が現れるときは、熱を除く力の強い黄連を加えた「黄連温胆湯」がいいでしょう。
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