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月経痛の診断と治療
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月経痛の診断と治療
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元気が不足するために起こる月経痛の治療(気虚痛)
食生活の不摂生や、ストレスによる消化・吸収力の低下、臓腑機能の失調、慢性病、疲労などは、からだが機能を発揮するために欠かせない、精選された滋養物質(精)を気や血に変える力や、血や津液などの滋養物質を運ぶための原動力不足を引き起こします(気虚)。血行が悪くなり、臓腑などに栄養や潤いが行きわたらないため、下腹部が重く痛みます(虚痛)。
動悸や息切れ、声に力がない、汗をかきやすい、疲れやすく元気がない、食欲不振、下痢、内臓下垂、舌の色が淡い、脈が軟らかく細くて無力、といった症状をともなうときは「補中益気湯」などが効果的です。
血液が不足するために起こる月経痛の治療(血虚痛)
臓腑の機能が失われて必要な量の血液をつくることができなかったり、出血によって血液が多量に失われると、臓腑や組織器官に必要な熱や滋養、潤いが十分行きわたらなくなります(血虚)。筋肉がけいれんし、下腹部や胸の脇、頭が痛みます(虚痛)。
顔面蒼白、頭のふらつき、目のかすみ、やせる、動悸、睡眠障害、手足のしびれ、舌の色が淡い、脈が細いといった症状をともなうときは「四物湯」を選びます。
元気と血液がともに不足して起こる月経痛の治療
気と血はいつも一体になって働いていますから、一方が不足すればもう一方も不足します。月経痛の多くは、この「気血両虚」が原因です。
飲食の不摂生や過労などによって消化・吸収力が落ちたり、慢性病による消耗やけがによる多量の出血などがあると、生命活動の物質的な基礎である気と血が損なわれ、臓腑の機能がおとろえます。すると、熱エネルギーや栄養と潤いが不足します。そのため、月経開始後から下腹部の主だるい痛みが続きます(虚痛)。
下腹部の痛みは、おさえたり温めると楽になります。これに、顔色が悪い、元気がない、肌の色が悪い、といった症状をともないます。また、からだの上のほうの滋養が不足すると、頭痛や頭のふらつき、動悸や絞めつけられるような胸の痛みも起こります。
おさえたり温めると気持ちがよく、顔色が白くつやがない、頭のふらつき、動悸、疲労倦怠感などをともなうときは「十全大補湯」や「人参養栄湯」「帰脾湯」などがいいでしょう。
機能がおとろえて起こる月経痛の治療(陽虚痛)
老化や体質虚弱、性生活の不摂生や慢性病のために、全身活動の原動力となる熱エネルギーの生産力が低下すると、血液を循環させ、津液を気化する力がおとろえます(陽虚)。すると、相対的に陰気が盛んになり、全身の機能が低下して冷えるため、ひきつったような固定性の下腹部痛や頭痛、関節痛が起こります(虚痛)。
これに、冷えや寒さをきらって温かい状態を好む、のどが渇かない、顔面蒼白、手足の冷え、尿が透明で多い、泥状便、舌の色が淡く白い苔がつく、脈が遅く弱くなる、などの症状をともなうときは「八味丸」や「人参湯」などを使います。
液体成分が不足するために起こる月経痛の治療(陰虚痛)
臓腑や組織器官などには、精や血、津液といった液体成分が欠かせません。病気などによってこれらが不足すると(陰虚)、相対的に陽気が余って熱が生まれます。熱によって血液が濃縮され、血行が乱れるために、臓腑や組織器官などが潤いを失い、下腹部痛や腰痛が起こります(虚痛)。
温かい状態をきらって涼しい状態を好む、のどが渇いて冷たいものを飲みたがる、顔面紅潮、手足の熱感、尿が濃くなる、大便の乾燥や便秘、舌が紅く黄色い苔がつく、脈が細く脈拍数が多い、といった症状をともなうときは「六味丸」などを使います。
陰気(精や血)は陽気をつくるための原料となるため、陰虚は陽気の不足を引き起こします(「陰損及陽」)。反対に、陽気が損なわれたり不足すると、精や血をつくることができなくなって陰気が不足します(「陽損及陰」)。
感情の乱れやうつ滞によって起こる月経痛の治療(気滞痛)
感情が急激に変化したり、気分のふさいだ状態が続くと、「肝」の機能が失われ、生理機能が停滞します。このような「肝鬱気滞」の月経痛では、下腹部が脹って重く痛みます(実痛)。月経周期は不規則で、経血の量は一定しません。経血が暗紅色あるいは紫色になったり、かたまりが混じることもあります。胸の脇の痛みや乳房の脹り、イライラ、ため息、胸苦しい、舌が紅い、弦を張ったような脈をふれる、といった症状をともないます。
肝鬱気滞による月経痛に最適なのは「調経飲」あるいは「柴胡疏肝散」「牛膝散」です。エキス剤では、四物湯に「香蘇散」または「逍遥散」を合わせたものが効果的です。
血液の停滞によって起こる月経痛の治療(血瘀痛)
慢性病やストレスによる肝の機能失調(気滞)、生命活動の原動力である陽気の不足による冷え、打撲や病邪の侵入など、内外のさまざまな原因のために、血流が滞ることがあります。この血瘀のあるところでは気や血が通らないので、月経前から、下腹部や下腹部の両側が刺すように、あるいは切られるように痛みます(実痛)。
痛むところは一定で、おさえるとかたまりをふれることもあります。頭痛や腰痛をともない、胸苦しい、口の乾きといった症状をともないます。また、舌が紫色になったり暗紅色の斑点(「瘀点」「瘀斑」が現れ、弦脈やひっかかるような脈をふれるようになります。
このような血瘀による月経痛の治療には「桂枝茯苓丸」や「桃核承気湯」あるいは「冠脉通塞丸」」などを使います。
また、血虚に気滞と血瘀が重なって月経痛が起こるときは、「決津煎」が効果的です。エキス剤では、「芎帰調血飲」に桂枝茯苓丸を合わせて使います。また、気虚が明らかなときは人参や黄耆を加えるといいでしょう。
熱がからむ月経痛の治療(熱痛)
気滞が続くと熱(火)が生まれます。また、肝の陰気(特に血)がふだんから不足ぎみの場合は、相対的に余った陽気が熱に変化します。あるいは、あぶらっこいものや辛いものばかりを偏食していると、体内で熱の産生が盛んになります。
熱は、気血の活動を必要以上に加速します。そのため、細い血管(「絡脈」「孫脈」)に許容量を超える血液が流れ込んであふれたり、逆こうして経絡が不通となるので、痛みが起こります。いずれの場合も、月経前から下腹部が痛み、強い頭痛が起こります(実痛)。発熱や頭のふらつき、イライラ、口が苦い、目の充血、尿の色が濃い、便秘、舌が紅く黄色い苔がつく、脈が細く弦を張ったようになり脈拍数が増える、といった症状をともないます。
このような熱の症状があるときには「加味逍遥散」を、腎と肝の陰や血が不足して腰痛をともなうときは「杞菊地黄丸」を使うといいでしょう。
また、肝の機能が滞ると「脾胃」の機能が失われるので湿が生まれます。湿は粘性があるため停滞しやすく、熱と結びつきやすいので、「湿熱」になります。湿熱は気滞を加速して血行を乱します。
湿熱による月経痛では、月経前から下腹部が重く刺すように痛みます(実痛)。さらに、経血にかたまりが混じる、黄色く悪臭のある帯下が出る、微熱、尿の色が濃い、頻尿、といった症状をともないます。
湿熱による月経痛には「温清飲」、四物湯に「竜胆瀉肝湯」を合わせたものや、四物湯に加味逍遥散とヨクイニンや香附子を合わせたものがいいでしょう。
冷えがからんで起こる月経痛の治療(寒痛)
冷たい風にあたったり、冷たいものを飲みすぎたり食べすぎたりすると、からだが寒の性質に傾きます(実寒)。また、全身の原動力となる腎の熱エネルギーが不足する場合(「腎陽虚」)にもからだが寒の性質に傾きます(虚寒)。このときは脾胃の機能も失われ、湿が生まれます。寒も湿と結びつきやすいので、「寒湿」の症状が現れます。
実の寒湿による月経痛では、月経前から月経日にかけて下腹部の両側が脹って絞るように痛み、冷やすと痛みがひどくなります(実痛)。経血は暗紅色で、かたまりが混じることもあります。舌は暗紅色になり、緊張した脈をふれます。
虚の寒湿による月経痛では、月経開始後に絞るような痛みが起こります(虚痛)。さらに、顔色が悪い、舌の色が白っぽくボテッとなる、脈が弱くなる、といった症状をともないます。
実の寒湿によって起こる月経痛には四物湯と「呉茱萸湯」を合わせたものや「五積散」、四物湯に「五苓散」あるいは「平胃散」を合わせたものなどを使います。また、虚の寒湿によって起こる月経痛には温経湯や「当帰芍薬散」、「当帰四逆呉茱萸生姜湯」や四物湯に香蘇散を合わせたもの、四物湯に「真武湯」や「牛車腎気丸」などを合わせたものを使うといいでしょう。
このように、月経痛にはさまざまな原因があります。しかし、虚実挟雑の状態で起こることがほとんどなので、痛みの性質や随伴症状から原因を絞り込み、漢方薬を組み合わせて治療を行うことが大切です。 |
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