|
|
|
1 |
胃潰瘍のほとんどは寒いタイプ |
|
胃に痛みがあるときは、胃壁が荒れたり傷ついたりしていると考えがちですが、傷がなくても気が滞っていれば痛みは起こります。逆に、まったく痛みがないのに検査で胃潰瘍が見つかる場合もあります。
現代医学では、胃潰瘍を新薬でピンポイント的に治療しますが、潰瘍が治っても痛みがとれない場合や、再発してしまうことも多いのが難点です。中医学は潰瘍の有無より症状を重視して治療を行いますので、現代医学では治療が難しい慢性的な胃潰瘍にも効果があります。 |
2 |
胃潰瘍の原因はストレスばかりではない |
|
胃潰瘍の原因は、ストレスや精神・情緒の不安定ばかりではありません。長期にわたって不摂生な食生活をおくっていたり、過労で胃腸が弱って起こることもあります。
また、からだの中をめぐっている気と血のバランスが崩れて(「気血失調」)、胃潰瘍の原因になることもあります。気と血は、ふだんは協調し、依存し合っているため、一方の機能が乱れると、他方にも影響が出てくるのです。 |
|
|
3 |
気・血の不足や滞りが原因で胃潰瘍になる場合 |
|
気や血が滞ったり、不足する原因には、不摂生な食生活やストレス、慢性病による消耗などが考えられます。気と血のバランスの崩れのうち、胃腸病に関係するのは次の三つです。
①気の滞りが血の滞りを引き起こす場合
栄養を運ぶ気が滞ると、からだの機能が正常に働かなくなり、血まで滞らせてしまう原因となります。症状は、気の滞りがどこに起こっているかによって異なりますが、必ず痛みを伴います。
②気が不足して血を滞らせる場合
胃腸の消化吸収力が落ちると、全体的に気が不足して血を運ぶ力が弱くなります。これも血を滞らせる原因になります。
③気と血の両方が不足する場合
気の不足が原因で血が不足するケースと、大量の出血や慢性病による消耗で血が足りなくなり、気の不足を引き起こす場合があります。血の不足とは単なる貧血ではなく、あらゆる栄養素を含む血漿成分が減り、バランスが失われた状態です。血漿成分が減ると、血の濃度が高くなって流れが悪くなってしまいます。 |
4 |
慢性化した寒いタイプの胃潰瘍は「桂枝加芍薬湯」が合うことが多い |
|
胃潰瘍の治療は、まず痛みや他の症状でタイプを見分けることが大切です。ここでは、慢性の胃潰瘍を中心に治療法を説明していきましょう。
寒いタイプの症状で、ひきつるような痛みがあり、温めたり触ると和らぐような場合には「小建中湯」などを使います。
ただし、慢性的な胃潰瘍で痛みが激しくないときは、酸っぱい水が上がってくるときにこの薬を服むと、かえって胃がもたれることがあります。そういう場合は、小建中湯から膠飴を取り除いた「桂枝加芍薬湯」が最適です。痛みが比較的強い場合にはこれに「安中散」を加えます。酸っぱい水が上がってくるときは、「二陳湯」や「半夏厚朴湯」など、半夏の入った処方を加えます。
寒いタイプの胃潰瘍の中でも、嘔吐があり、手足が冷え、冷たいものを異常に嫌うなど寒い症状がきわめて強い人は、肝が冷たい状態になるため、胃腸が働かなくなっていることがあります。こういう場合には、肝を温めながら胃の働きを正常に戻す「呉茱萸湯」を使います。
|
|
|
5 |
気や血のバランスが崩れている場合の治療 |
|
からだの中をめぐっている気や血のバランスが崩れて胃潰瘍が引き起こされた場合には、次のような治療法が考えられます。 ストレスや心配事が原因で気が滞り、血の滞りまで引き起こしてしまった場合には、「逍遥散」か逍遥散に「桂枝茯苓丸」を加えたものを使います。
もともと胃腸が弱かったり、不摂生な食生活を続けたために、気が不足して血まで滞ってしまうことがありますが、こういう場合は、脾胃の気を補う「補中益気湯」や「六君子湯」を使います。不足している気を補えば、血の滞りも自然に改善され、痛みもなくなるからです。
気も血も不足している場合には、「十全大補湯」などがよく合います。 |
6 |
慢性化した熱いタイプの胃潰瘍もまれにある |
|
熱いタイプの胃潰瘍で「実」を伴っていると、大変激しい症状を示します。ところが、まれに慢性で熱症状を示す「虚熱」タイプの人がいます。熱症状とともに、食欲はあるのに食べられないという訴えがある人は、たいてい胃が乾いた状態になっていますので「麦門冬湯」で胃に潤いを与えるようにします。
また、同じ虚熱タイプでも、精神的な原因が大きく、痛みがだんだん増すような場合には、「加味逍遥散」と「六味丸」を合わせて使います。 |
|
|
7 |
寒と熱が混じり合った症状がある場合 |
|
このように、胃潰瘍の治療はまず寒・熱どちらの症状が現れているかを見分けることが大切です。ところが、「臍のあたりから上が熱く下が冷たい」「嘔吐も下痢もある」というように、寒と熱が混じり合った症状を示すことがあります。この場合には、「半夏瀉心湯」に「呉茱萸湯」を加えて使います。痛みが強い場合には、さらに「芍薬甘草湯」を加えるとよいでしょう。 |
|