外感熱病弁証
外感熱病は病邪が人体に侵入して引き起こされる全身的疾患で、発熱を主症状とする。
この種の疾病は現代医学では主として細菌、ウイルスなどの病原微生物の感染症に相当しますが、寒冷、暑熱、湿気などの物理的条件によるものも含まれます。
外感熱病弁証は漢代の『傷寒論』が基礎となっており、さらにこれを発展させて清代にまとめられたのが、『温病学』である。以後、外感病の治療には、この『傷寒論』の六経弁証と『温病学』の衛気営血弁証が運用されています。
六経弁証
外感熱病の弁証論治で、主として「寒邪」による陽気の消耗の経過を分析したものです。
六経弁証では、外感熱病の臨床症状の推移を、太陽病証・陽明病証・少陽病証(三者を三陽病証と呼ぶ)、太陰病証・少陰病証・廟陰病証(三者を三陰病証と呼ぶ)の六型に分け、各状態の病理・症候・主な治法・主な処方及び六経病証間の伝変などを詳細に分析します。
一般に、疾病の初期から極期にかけては患者の正気にはあまり消耗がなく、症候は亢奮性熱証・実証が主となりこの経過が三陽病証に相当します。
太陽病証
太陽病証
外感熱病の初期にみられる病証で、風寒の邪を感受して三陽経絡がまずその病を受けます。「太陽は一身の表を主る」と言われているように外邪が人体を侵入するときは一般に太陽から入ります。
太陽病は「太陽中風証」と「太陽傷寒証」に分けられます。
●太陽中風証
病人の営衛が不和で病気に対する抵抗力も弱く、病邪(風邪)を駆逐することができないため、汗が出ても病がなおらないものをいいます。(表虚)
(症状)
発熱・悪風・自汗・頭痛
(治法、処方)
調和営衛:桂枝湯
●太陽傷寒証
太陽経が寒邪を受けて、衛気がはばまれて肌表が閉塞するため無汗となるものをいいます。(表実)
(症状)
発熱・悪寒・無汗・頭項痛・身体痛
(治法、処方)
辛温解表:麻黄湯
陽明病証
陽明病証
外感熱病の熱盛期にあらわれる病証で、寒邪が真に侵入して化熱した段階です。
一般にはは、「陽明病経証(陽明経証)と「陽明病腑症(陽明腑証)こ分けられます。
●陽明病経証
熱邪が盛ん奴め津液の柵がみられるもの。(裏熱)
(症状)
発熱・大汗・激しい欄・顔面紅潮・心煩・苔黄燥
(治法・処方)
清熱生津:白虎加人参湯
●陽明病腑証
陽明病経証がさらにすすみ、胃腸内の食滞や糞便をど熱邪が結びっいて存在している。(裏実)
(症状)
日哺潮熱(にっぽちょうねつ)・譫語(せんご)・大便秘結・腹部脹満、疼痛(拒按、持続的な痛み)苔黄躁
(治法・処方)
清熱瀉下:調胃承気湯
少陽病証
少陽病証
外感熱病が表から裏へと進展する中間の病証です。正気が比較的弱く、病邪が肌表から入って少陽経に結し、機能がとどこおって寒邪の化熱や胃の機能不調が起こっているものです。表証でも裏証でもない特有な症候ですので半表半裏証とも呼ばれます。
(症状)
寒熱往来・胸脇苦満・口が苦い・咽喉が乾燥(軽度)・眩暈・食欲減退・心煩(軽)・嘔吐
(治法・処方)
和解少陽:小柴胡湯・柴胡桂枝湯・大柴胡湯
太陰病証
太陰病証
一般に三陽病証の治療が適当でなく(太陽病証、少陽病証を誤下、陽明病証に寒涼剤を過用)、脾を損傷して起こります。又、元来脾気虚のものが寒邪を感受したときにも起きます。
(症状)
食欲減退・下痢(熱臭を伴わない水様便)・嘔吐・腹部脹満、疼痛(喜温、喜接、断続的な痛み)・口渇せず・舌淡・苔白
(治法・処方)
温中散寒:人参湯
少陰病証
少陰病証
心腎が衰弱して抵抗力が顕著に減退した病証をあらわした段階です。心腎の虚は陽虚にも陰虚にもなりますが、寒邪は陽を傷つけやすいため虚寒証(陽虚)が最もよく見られます。
(症状)
寒がる・四肢厥冷・精神疲労・下痢(未消化物が混じる水様便)・口渇せず・あるいは口渇(飲量は少なく・熱い物を飲みたがる)・舌淡・苔白
(治法・処方)
回陽救逆:四逆湯
厥陰病証
厥陰病証
外感熱病の後期に見られる病証で、正気が衰弱するため陰陽の調和が失調し、寒熱錯雑しているものです。
(症状)
激しい口渇(消渇)・気が胸部につき上がる(気上衝心)・心中痺熱・空腹感はあるが、食欲がない・四肢厥冷・下痢・嘔吐
(治法・処方)
調理寒熱:烏梅丸